イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり13(Santu Marcialisと村祭) by のざけん

 サルディーニャのアグリツーリズモ(農家民宿)「Santu Marcialis」での3日目の夕食。厨房の前を通ると、ここの息子も出動して大がかりに料理の準備をしている。手招きされて部屋に入ると、そこには仔豚の丸焼きがあった。

IMG_6367.JPG


 大きなコルクの樹を割ったものに、仔豚の断片が豪快に盛られている。ミルトの枝葉の緑が鮮やかだ。ハサミをもった母と息子がテキパキと仔豚の肉を骨付きのまま切り分けている。それも仔豚1匹や2匹ではなく、10匹分ぐらいありそうだ。まさかこれ全部が今日の晩飯か・・・と一瞬想像してしまったが、それはもちろんありえない。この晩、すぐ近くの街でお祭りがあり、そのための仕出しを頼まれているということだった。
 ミルトは最後に切り分けられた肉片に添えられるだけだが、それでも独特の香りが肉に馴染むという。

IMG_6372.JPG

前菜
 さて、3日目のテーブルにつく。この日の前菜は、茄子のローストとトマトとバジルがオリーブオイルで和えられていた。シンプルな料理だが、やはりここの野菜のうまさとオリーブオイルの質の良さ、丁寧なロースト具合が絶妙のバランスで、とても満足感があった。

IMG_6385.JPG


 次は、自家製のサラミ。このサラミは脂肪塊が大きいが、その見栄えに反して、優しく上品な味わいである。脂肪分自体が上質でうまい。やはり塩分はそれほど高くない。

IMG_6386.JPG

プリモ・ピアット
 パスタは、トマトソースのラヴィオリだった。中にはリコッタチーズが挟まっている。ラヴィオリはフレッシュ(生)の手打ち。ここのトマトソースは、ほんとに優しい味でパスタと馴染んでいて、飽きずに毎日でも食べられる家庭料理のうまさがあった。

IMG_6395.JPG


 食卓にはペコリーノチーズ。これを食中にぱくぱくとかじりながら、赤ワインを飲み進める。

IMG_6397.JPG

セコンド・ピアット

 今日のメインはもちろん、あの仔豚だ。

IMG_6379.JPG


 実際の食卓には、こんな頭部は出てこなかった。今日も仔豚の丸焼きのパリパリの皮を堪能し尽くす。その他のいろんな部位の味わいも、なんとなく分かってきた。切り分けた断片ではなく、丸のままの仔豚にナイフを入れながら食べてみると、部位による味の違いがもっとよく分かるだろう。次にチャンスがあればやってみたいものだ。

IMG_6403.JPG


 今日のデザートは、桃 。各自がテーブルの上でナイフで切り分けて食べる。イタリアの男も女も、さすがに食卓のナイフさばきが上手で果物を剥く姿がかっこいい。男たちは、カットした桃を赤ワインの入ったグラスに漬け込んで食べていた。

 この日の夕食は、いつも通り午後8時に始まったが、料理が出される間隔は短く、午後9時40分にはデザートを食べ終わった。これはイタリアの食事ではとても早いペースだ。この日は、すぐ隣の街でお祭りがあり、それに合わせてのペースらしい。お祭りの見学に出かけることにした。

村の祭りを見物

 農家民宿から数百メートル行くと、そこが祭りの行われる街だった。午後10時、小さな街の通りをたくさんの人が往来している。

IMG_6413.JPG


 中心となる広場の周辺には、夜店も出ている。

IMG_6411.JPG


 お菓子の塊を切り分けて売っていた。

IMG_6408.JPG


 ナッツ類の量り売り。

IMG_6406.JPG

 夜店を眺めながら歩いていると、見たことのある顔とすれ違った。昨日、DOLIANOVAのワイン工場の瓶詰ラインで働いていたおっちゃんだった。お互いに気がついて、目で挨拶をして通り過ぎた。

 この祭りは、ほんとうにこの小さな街のローカルなものらしい。観光客らしい人はほとんどいない。歩いているのは、地元に暮らす人たちか、その親戚や知り合い、友人ぐらいの範囲だろう。アジア系は私たちぐらい、黒人系の人も全く見かけなかった。
 そして、この街を歩いている人たちの特徴に気がついたのだが、みな一様に背が低かった。男性の平均身長は165cmぐらいかもしれない。日本人の平均よりは確実に低かった。

 広場でしばらく待っていると、午後11時になってやっと舞台で踊りが始まった。男女数組が小さなステップでダンスをする。子どもの組から始まり、大人の組に入れ替わり、踊りが続く。私はヨーロッパの民族芸能には詳しくないが、かなり古風な踊りや音楽だという気がする。イタリアというよりも、中東欧やスペイン・ポルトガル、スコットランド、ケルトなどを連想してしまった。

IMG_6429.JPG


 この踊りの伴奏が、この3本笛である。3本の笛を同時に吹いて和音を出している。

IMG_6425.JPG


 この3本笛の音色と踊りの様子のムービー。回線に余裕がある人だけダウンロードしてください。AVI形式のQuickTimeムービー22MBです。

ファイルのダウンロード(AVI形式22MB)

 踊りを見ていると、隣の男性が話しかけてきた。なにか一生懸命説明しようとしてくれているが、イタリア語は分からない、日本人だ、と言うと残念そうなそぶりをする。横澤さんを呼んで通訳してもらうと、舞台で踊っている爺さんは97歳だということだった。踊りながら逆さまになったりしていた爺さんである。それはすごい。私の祖父と同い年だ。

 深夜まで踊りを見ていたが、なかなか終わらないので、0時過ぎに農家民宿に戻った。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり12(有機農家の組合とビーチ) by のざけん

 この日の午前中は、有機農家の協同組合「S'atra Sardigna(サトラ・サルディーニャ)」の事務所を訪問することにしていた。この組合は、南イタリアでも有数の規模と歴史を持つ有機生産者団体らしい。横澤さんの車で、カリアリの近郊の事務所に向かう。

IMG_6245.JPG

 サトラ・サルディーニャのロゴマークのついたトラックが事務所の前に止まっている。外見はただの倉庫みたいな建物を奥に入っていくと、明るく清潔そうな事務所があった。

IMG_6255.JPG


 事前に横澤さんにアポイントメントを入れてもらっていたのだが、組合長が出かけていたので、急遽、販売部門の責任者が応対してくれることになった。小柄で40代後半ぐらい、短髪に白髪が軽く混じっている、優しそうな男性だった。物腰も柔らかで落ち着いた雰囲気だが、子どものような瞳の輝きもある。Marioという名前の彼は、設立当初からのメンバーらしく、いろんな質問に丁寧に応えてくれた。

S'atra Sardigna(サトラ・サルディーニャ)の歴史と現在
 Marioに聞いた話をざっとまとめる。
 サトラ・サルディーニャは、1982年に20代の若者5人ほどで始めた。それまで、こういった有機農業の生産者の組織はサルディーニャにはなく、最初は自給用の農産物を作るところから始まった。当初のメンバーには農家出身者もいたが、全く農業が初めてのものもいた。ボローニャ大学で有機農業を勉強したものもいた。
 そして、カリアリの街中に、有機野菜の店を開き、そこで自分たちで直接農産物を販売するようになった。これが評判になり売り上げを伸ばしていく。1986年にはドイツを中心に輸出を始めた。1990年代にはEUの補助金を受けてメンバーも増えたが、現在は補助金がなくなったので一時期より20%ほど生産者数は減っている。現在、生産者約100軒、流通に携わる組合のスタッフが15名である。

IMG_6253.JPG


 いま販売しているのは、生鮮野菜や果物各種、パスタやパンや蜂蜜などの加工品、オリーブオイルやワインなどである。全て、Biologiche(ビオロジック=有機)で生産され、認証を受けている。

IMG_6262.JPG

 全体の6割を輸出しており、ドイツ、イギリス、フランスなどEU圏内が中心である。日本にも少しだけ輸出している。9月末に東京で行われた有機食品のイベント「Bio Fach」にも出店して、Marioが出かけたようだ(そのときの様子が、やまけんのblogにレポートされている)。
 また、直営店がカリアリ市内などに3店あり、そこでの売り上げが2割ほどになっている(直営店もこの日に訪問した)。
 サトラ・サルディーニャは、他に、アグリツーリズモも運営している(今回の滞在で、このアグリツーリズモに宿泊したかったのだが、ちょうど休みに当たってしまって泊まれなかった)。

 多くの生産者からの有機農産物の品質を保つ努力や、生産者との契約の形態、イタリアでの有機流通の様子など、さまざまな話を2時間ほど聞いたが、最後まで丁寧に応えてくれてありがたかった。お昼に近づいたので、お礼を述べて切り上げ、カリアリ市内の直営店舗を見学することにした。

 サトラ・サルディーニャのWebのURLをメモしておこう。
http://www.satrasardigna.it/
 イタリア語、英語、ドイツ語、日本語のページがあり、商品紹介などしっかりされている。

カリアリ市内の有機食品販売直営店

 カリアリ市内の繁華街から少しはずれた小さな通りに、サトラ・サルディーニャ直営の有機食品販売店舗があった。州議会や地元銀行本店のすぐ近くである。間口は狭いが奥行きがたっぷりある建物であった。日本のコンビニよりも二回りぐらい大きいサイズで、商店街などによくある最小規模のスーパー程度の面積である。平日の昼間だったが、ここの表の人通りに比べて、店内にはお客さんがいるような感じを受けた。

IMG_0507.JPG


 店内をざっとみると、野菜、肉、魚、チーズなど生鮮品の売り場もあるが、それほど大きくはなく、それ以外の加工品や食材、日用品売り場が中心のようだった。

 印象に残った棚の画像をあげておく。まずは、Bioのワイン売り場。サルディーニャだけでなくイタリア各地のBioのワインが揃えられている。もちろん、サトラ・サルディーニャのワインも数種類おいてあった。

IMG_0512.JPG


 Bioのワインについては、製品の水準の振れ幅が大きくて、選ぶのは非常に難しい。ハズレもあるがたまに大当たりもある。この棚は、そういうこだわりがあるわけではなさそうな扱いだった。

 生産者の顔写真入りのパッケージの米がある。「○×兄弟のお米」という感じだろうか。それっぽい兄ちゃんたちが映っている。

IMG_0525.JPG


 Bioのコーラが並んでいた。スナック菓子やクッキーなども、豊富な種類があった。

IMG_0528.JPG


 サトラ・サルディーニャのオリーブオイル。500mlが3.99EURO。

IMG_0531.JPG


 一通り店内を見て、オリーブオイルやレモンチェッロ(サトラ・サルディーニャの製品)を買って店を出る。日本でいうと、地方都市にあるナチュ○ルハウスのような感じで、あまり出入り客は多くないが、それなりに持続的な商売になっているようである。


Chiaのビーチ

 この日は、カリアリから南下して、サルディーニャ島の南端のChiaのビーチを目指すことになった。海岸沿いの干上がった塩湖を眺めながら40分ほどドライブ。幹線道路は海岸から少し内陸に入ったところを走っている。
 舗装されてない駐車場に車を入れて、砂の上を数100mあるいてビーチに向かう。

IMG_6291.JPG


 幅広く、美しい砂浜のビーチだった。海は明るいグリーンで、濁りがほとんどない。さすがに、横澤さんの一押しのビーチだけあって美しく、スケール感も充分、人の密度もほどほどで、申し分なかった。

IMG_6310.JPG


 そして、南向き(に近い)方角のビーチであるというのも重要だ。やはり、ビーチは南向きが最高なのである。海に向かうとその上に太陽がある、というビーチの方角的なこだわりを持つのは私だけだろうか? 太陽を背にして海に向かうというのは、南に太平洋を眺めて育ってきた私には違和感がある。例えば、日本海の海岸に行っても、なにか違う、しっくりこない、それはビーチの向きにあるということに数年前に気がついた。自然の感じ方や好みも、育った環境に影響されることがやはり多いのだろう。

サルディーニャのビーチが美しい理由

 サルディーニャでは、島全体、どこに行っても美しいビーチに出逢える。いろんなタイプのビーチがあるのだが、そのどれも同じように美しい。その理由を幾つか推論してみた。
 まず、海水中に泥がほとんど存在しない。これがビーチの美しさを生み出す大きな要因だろう。

sardegna/IMG_6366L
  (クリックすると別ウィンドウで拡大)

 泥がなければ、このように波打ち際まで濁りのない透明状態を保つことがたやすくなるだろう。白い泡の部分も、下の砂が動かず、そのままである。
 なぜ泥が少ないのかというと、陸上から供給されないから、ということになりそうだ。雨が比較的少なく、大きな川も存在しないところでは、陸地由来の濁りも少ない。泥の無い海底はきれいで、砂の白さが際だつ。

 このビーチの砂を拡大してご覧あれ。
  (クリックすると別ウィンドウで拡大)
sardegna/IMG_0553L


 まるで、紅茶やコーヒーに使う上等の砂糖のようだ。ひとつひとつの結晶の独立感が美しい。
 白い砂や石の海底は、太陽の日差しを受け、海水中に白い光を散らし、青色を減衰させることで、エメラルドグリーンの色が生みだされる。サルディーニャのグリーンの海は、白い砂と太陽、そして雨の少ない地中海性気候が当たり前に作り出してきたものだ。

 そして、このビーチを保つための人間の側の努力にも気がついた。例えば、美しい海岸線は、建造物が目立たない、というか存在しないところが多い。法律や条例で海岸線への建築規制が行われている地域があるようだ。
 家庭排水のことなども気になったが、具体的には知ることができなかった。しかし、話を聞いたり目に入った範囲では、排水を水路に直接流しているようなところはなかった。

 Chiaの美しいビーチを夕方まで堪能して、農家民宿の晩飯に間に合うように戻る。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり11(Santu Marcialis) by のざけん

 アグリツーリズモ「Santu Marcialis」での2日目の夕食。この晩は宿泊客が昨日より2人少なく、そのためか、ここの家族も同じテーブルで食事をするようだ。総勢15名ほどでテーブルを囲む。昨晩は例のオヤジだけが客と食事を共にし、他の家族は別の食堂(30人ほどは入れそうな)で食べていた。

IMG_6381.JPG


 上の写真、手前左側が例のオヤジである。

 テーブルにはパンと赤ワインとチーズが置かれている。
 チーズは2種類。たっぷりのリコッタ。

662_6217.JPG

 それからペコリーノ。

662_6218.JPG


 ここの赤ワインは自家製だろう、果実味が豊かで渋みはあまりなく、食事の友として素直に飲み進められる、自家製といえどもかなりよく出来たワインだった。この農園のものは、野菜にしろオリーブオイルにしろ果物にしろ、全てが優しい味で、ハズレ無く、なんでも安心できる美味しさだった。

前菜

662_6220.JPG

 まずは、生ハムにペコリーノとオリーブオイルかけ。この生ハムは、プロシュートではなかった。塩分はほとんどなく、脂肪も入ってない赤身の部分で、燻製の香りもほとんどしない。ペコリーノチーズの塩分でちょうどよいぐらいの塩気になっていた。そしてここのオリーブオイルは、これがかかっているだけで、なんでも香(かぐわ)しく艶やかな一品に変身させる魔法の液体である。このオリーブオイルが包み込んだ柔らかな赤身肉は、上品な脂分が混ざったトロのような食感になっていた。
 このハムはなんだろう?と話していると、オヤジが奥からブラブラと塊を提げてきてくれた。

662_6226.JPG


 これは、フィレをただ乾燥させて(水分を抜いて)熟成させたものだろう。どういう貯蔵方法なのかは確認しなかったが、例えば、粗塩の中に肉塊を埋め込んで水分抜きと熟成を行う方法が考えられる。なにかの料理本で見て、私も実際にこの方法で牛モモ肉の生ハム(燻製なし)を作ったことがある。清潔にきちんと管理すれば、思ったよりも上手に熟成が行える。生ハムというよりは、肉の熟成方法の一種だと考えた方がよいと思う。

 さて次は、期待のトマトである。この晩は軽くトーストしたパンの上に、例のオリーブオイルに和えたトマトが載せられている。これも絶対にうまいに違いない。

662_6228.JPG


 さすがに期待を裏切らなかった。トマトと馴染んだオリーブオイルのしっとり艶やかな食感と、サクッとしたパンのコンビで、パーフェクトな一皿だった。この農園の野菜たちとオリーブオイルは、どんな人の喉でも優しくサラッと通過し胃腸に馴染んで、身体の内側から幸せにするだろう。


プリモ・ピアット

 この晩のパスタは、イモムシ形の例のやつで、優しいトマトソース、その上にペコリーノの粉がかけられている。このパスタも、ソースが巧く馴染んでバランスよく、ばくばくとたくさん食べられた。何度もおかわりをしてしまった。
662_6231.JPG


セコンド・ピアット

662_6233.JPG

 メインは、サルシッチャ(ソーセージ)と豚肉のローストである。このパリパリの皮の脂分が最高だ。シンプルに塩味だけで、すごいご馳走になってしまう。パリパリの皮とジューシーな肉の焼き加減は、当然なのだろう、いつも上出来である。添えられたミルトの枝の香りがよいアクセントになっていた。

食後

 デザートのケーキが2種類。

662_6239.JPG
662_6240.JPG


 そして、すっかり習慣になった食後酒レモンチェッロを飲む。

662_6236.JPG


 この日は、まさに家族の食卓だった。料理はいつもより早いペースで進み、料理も給仕も終えた女性たちがデザートの時間をくつろいで堪能している。この晩のオヤジは、さすがに控えめだった。奥さんや娘さんたちの前で、決して馬鹿話をせず、威厳ある紳士を一生懸命演じている。が、オヤジがいくら気張っても、女性たちにはまともに相手されず、適当にあしらわれている。たまに突っ込まれて窮しているオヤジの姿が、会話の雰囲気で分かって、微笑ましかった。
 少し早めに(それでも午後10時は過ぎていた)部屋に上がる。家族の会話は楽しく続いていた。
 この日の食卓も、温かく楽しく美味しく、大いに満足して眠りにつく。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり10(ワイン組合とカリアリのスーパー) by のざけん

 アグリツーリズモ(農家民宿)「Santu Marcialis(サントゥ・マルチャリス)の朝食は、パンとチーズ、クッキー、ジャム、そしてカフェ&ミルクだ。

IMG_6070.JPG

IMG_6072.JPG

IMG_6073.JPG


 朝食を終えて、ここからすぐ近くのワイナリー見学に向かう。農家民宿から車で3分もかからなかった。幹線道路のすぐ横の広大な敷地に、大きな工場のような建物がある。そこが、ワイン醸造所「DOLIANOVA」だった。

IMG_6113.JPG


 ワイナリーと聞いて想像していたのは家族経営の小さな醸造所だったのだが、目の前のあるのは、巨大な工場である。こんな大きな建物は、この街の近所では他に全く見かけなかった。丘陵の続く田舎の風景には、ちょっと不釣り合いなぐらいの大きさだ。そういえば、高知の酒造会社トップの土○鶴の最新の蔵の立地がこんな感じだった。高知の田舎の山裾に「でーん」と巨大な建物がたっている。その唐突さと似たような感覚である。

 あらかじめ横澤さん(会社のHP)が見学のアポイントをとってくれていたので、案内してくれる人がついてくれた。ちょうどこの日の前後から、今年のブドウの出来具合の検査を始めたところらしい。

IMG_6102.JPG


 農家の人たちが持ってきたブドウをバケツに入れ、手でつぶし、その果汁を最新鋭の分析器に入れる。すると、その分析結果が瞬時にデジタル表示される。糖度だけでなく、PHなどの表示もあった。これで、ブドウの収穫時期を判断するという。今日の検査の結果からみて、本格的な収穫はもう数日先になりそうだということだった。

 ブドウが運び込まれて、圧搾、醸造、(樽熟成)、瓶詰、出荷までの一連の行程をざっと案内してもらう。

 樽の熟成室は、ちょうど改装中で、熟成中の樽は他の場所に保管を依頼しているとのこと。

IMG_6129.JPG

 瓶詰めしてパッケージする場所。

IMG_6155.JPG

 ワインの品質をチェックする検査室。

IMG_6149.JPG
 外からはわかりにくいが、直売所も併設されていた。買いに来るのは基本的に地元の人たちぐらいのようである。大きな瓶に、ガソリンスタンドようなホースでワインを充填して持ち帰る。

IMG_6211.JPG


協同組合の存在
 このDOLIANOVA(町の名前でもある)は、醸造所としてかなり大きいところだが、聞いてみると、やはりサルディーニャでも有数の大きさらしい。生産者約800軒の協同組合だった。これだけの規模の協同組合で、一定の質を保つには大変な労力がかかっているのだろうが、案内してくれた人や働いている人の雰囲気をみると、非常に真面目に堅実に取り組んでいるような感じを受けた。
 ここサルディーニャでは、協同組合が盛んで、仲間同士で気安く始めるような雰囲気らしい。それが土地の文化になっているのだろう。サルディーニャの集落や町並みの風景を見ていると、大土地所有制や大農園が発達したわけではなさそうである。イタリア本土では、逆に、大農園が中心で階層分化がすすんだ地域もあるようだ。
 サルディーニャのワインというと日本ではSELLA&MOSCAのワインを飲んだことがある、と言うと、案内してくれた人は、あそこは島外の資本が入って作り上げた大規模なワイナリーだ、と教えてくれた。
 DOLIANOVAのワインのラインナップはこんな感じである。

IMG_6205.JPG
IMG_6206.JPG
 地域としては、DOC Cagliari(カリアリ)に入っていて、このあたりのおもなブドウ品種は、Malvasia、Monica、Moscato、Nuragus、そしてCannonauあたりである。
 DOLIANOVAでは、それらの品種をほぼカバーした製品を作っている。ここのワインは、実際に見学した感触から、それなりの水準は超えていて、値段的にもリーズナブルであることが予想できた。が、このラベルのデザインなど、それほど力をかけてなさそうで、あまり見栄えがしない。まあ、逆に、生真面目さが伝わってくるので、安心できるとも言える。
 試飲はできなかったが、直売所で6本セレクトして購入する。すると、案内してくれた人が、この6本の(飲むべき)順番をメモしてくれた。最も高価なCannonauのRiservaでも20EURO以下だった。この6本は、お土産にそのまま日本に持って帰ってきて、実はまだ飲んでない。高知でワイン会のリクエストがあり、その約束のためにキープ中である。
 この組合のWebのURLをリンクはらずにメモしておこう。
http://www.cantinedolianova.com
 単にドメインを確保しているだけらしく、Webの中身はunder construction。
 広報用のパンフレットやCD-ROMも帰り際にいただいた。パンフレットはそれなりの作りである。CDの中身は、HTML形式の蔵ガイド資料であった。このデータをそのままWebにFTPすればいいだけなのになあ・・・というスキのありようも微笑ましく思えてしまう。それぐらい商売気のない、素直に堅実な蔵人たちだった。日本にもごく僅かだが輸出しているらしい。尋ねてみても、インポーターの名前が出てこなかった。見かけたらぜひ買ってあげたい。

 後に聞いて分かったのだが、このDOLIANOVAのすぐ隣町に、Argiolasという有名なワイナリーがある。土産物屋でここのワインを見かけて、あまりの高さに手を出せず(90年代後半ぐらいのものが100EUROぐらいしていた)、グラッパだけ買った(これも土産に持って帰ってまだ開封してない)。Argiolasを実際に訪問した藤田智子さん(会社のHP)によると、小規模で家族的な雰囲気で、すごく好感の持てるワイナリーだったそうだ。次にチャンスがあれば必ず行ってみたいワイナリーである。

カリアリのスーパーメルカート
 この日は午後は予定がなかったので、横澤さん行きつけのカリアリのスーパーに連れて行ってもらう。知らない土地に行くと、必ずそこのスーパーに行ってチェックするのが習性になっていて、やっとその時間がとれた。
 幹線道路沿いには、カルフール(フランス資本)もあったが、イタリア系のスーパーに入る。イタリア語で、スーパーマーケットは、そのまま、スーパーメルカートだ。
 中に入ってまず、Pizzeriaで軽い昼食。

104_0461.JPG

 すぐ隣はマクドナルドである。イタリアでもたまにマクドナルドは見かけたが、大きな道路沿いの店はあまり見かけず、こういったスーパーなど商業施設の中の店舗として入っていることが多そうだった。

104_0458.JPG

 Pizzaは、3種類を分けて食べた。

104_0463.JPG

 お供は、イタリアのビール。ポピュラーな銘柄のようだ。

104_0467.JPG

 さて、スーパー見物本番の報告の最初には、これを挙げておこう。

104_0452.JPG

 スライサーである。100EURO以下のやつもある。これはうちにぜひ欲しいものだ。日本ではスライサーなんて普通の家電店では売ってないよなあ。この冬には、冷燻で生ハムを作るつもりなので、スライサーが欲しい。現実的な道として、その辺のリサイクルショップで業務用の中古でも探そうと思っている。ここでは、スーパーのそれほど大きくない家電スペースに新品が何種類も並んでいる。さすがに生ハムの国だ。

 次に、ミシン。TOYOTA織機のものがある。日本でも売ってるのだろうか? そのうちチェックしてみたい。

104_0455.JPG

 サルディーニャのビール2種類。赤白のIchnusa(イクヌーザ)のラベルには、サルディーニャの赤い十字のマークがついている。滞在中、なんどか飲んだが、あっさり系の味だった。

104_0456.JPG
104_0457.JPG


 スーパーの食品棚で目にとまったのは(パスタはもちろんさすがの品揃えだったが)これである。

104_0469.JPG

 様々な種類のRiso(米)が売られている。用途別にラベルに表示されているらしい。

 サルディーニャ産の米も、数種類が色違いで統一パッケージデザインで並んでいる。お米がこんなカラフルな箱入りで売られているというのはやっぱり違う世界だということを実感する。

104_0470.JPG104_0471.JPG
104_0472.JPG

 生鮮品売り場の光景。巨大黄パプリカなど。

104_0482.JPG

 そして、Bio(有機)農産物のコーナーもあった。これはどうやら、このスーパーのPBらしかった。

104_0483.JPG


 それからサルディーニャ名産のボッタルガ。といっても、この左側のカットされた角状のやつは、シチリア産のマグロのボッタルガで、右側がボラのものだ。

104_0493.JPG


 鮮魚売り場。やっぱり高知で馴染みの魚が多い。

104_0496.JPG

 そしてやっぱりまたボラに出会った。ここでもきれいに並べられている。

104_0497.JPG

 パーネ・カラザウ売り場。

104_0490.JPG

 このスーパーでチェックしたところ、物価はやはり日本よりも少し高い水準である。野菜や果物、チーズ、生ハムなど肉加工品は、割安感があったが、それ以外のものは食料品でも、家電品等でも、日本より2割増しぐらいの感じである。例えば、ティッシュペーパーやトイレットペーパーがその水準であった。現地の人の実感だと、EUROになってから物価は2倍ぐらいになったという。為替相場で現在EURO高なのも影響しているのだろう。
 さて、スーパーで2時間ぐらい経過しただろうか、もっと徹底的に見ておきたかったが、カリアリの街の一番近いビーチを見物に行くことにする。

105_0503.JPG

 このビーチは、市の中心部からすぐ近くにあって、市民の憩いの場という感じだ。長い砂浜が続いている。この日は風が強くて、風に乗って飛んでくる砂が痛いほどだった。海水はかなりきれいな方だ。
 サルディーニャを去る時に飛行機の上から見下ろして気がついたが、このビーチのすぐ向こうには、美しいピンク色の土地が続いていた。ピンクフラミンゴが訪れる沼地である。塩田もあるらしい。

 ビーチを後にして、夕食の待つ農家民宿に戻った。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり9(Santu Marcialis) by のざけん

 この日から3泊するアグリツーリズモ(農家民宿)「Santu Marcialis(サントゥ・マルチャリス)」は、サルディーニャ南部のなだらかな丘陵地帯の中にある。州都カリアリから直線距離で北に20kmほどの土地である。なだらかな丘陵は、小麦やオリーブ、ブドウの畑におおわれていて、豊かな農業地帯という様相だ。

IMG_6080.JPG

 幹線道路から少しだけ入ると、そこが農家民宿サントゥ・マルチャリスの農園だった。園内の土の道を200メートルほどすすんで館に到着。この写真は翌日の朝の光で撮影したものだが、丘の上に立つお屋敷である。このあたりの土地は赤茶色で、その色によく馴染んだ赤いパステル調の建物だ。オリーブの木を背景に、さすがに絵になる光景だった。

IMG_6083.JPG

 屋敷の1階のテラスの椅子に腰掛けて、数人が談笑している。部屋に案内してもらい、荷物を運び入れる。私の部屋は、この建物の2階の一室。ベッドが2つあるツインの部屋を1人で利用した。部屋にはベッドと家具以外の設備はなく、洗面所やトイレ、シャワーとバスタブは2階の共同のものを使う。2階には同じような客室が合計4部屋、シャワールームが2つ。

 夕食は午後8時からだというので、それまで農園内を散歩する。館がある丘の斜面にはオリーブが整列している。館のすぐ下には菜園がある。その向こうは柵で仕切られた区画で、山羊の群れが放されていた。牧羊犬もいる。

IMG_6041.JPG

 さらにその先には、馬小屋あり、豚小屋あり、農機具小屋らしきものがあった。近寄ると、豚の親子が弾んだ足取りでこちらに向かってくる。エサを期待していたようだが、こちらがただの見物人だということが分かると(豚はちゃんと人間を見て考えているようだ。彼が判断した瞬間がよく分かった)、ついでに、という感じで水を飲んでから去っていった。

IMG_6048.JPG

 子豚は、いかにもやんちゃそうに、しっぽをふるわせチョロチョロと動き回っている。馬小屋の方に行って、馬のエサ場にちょっかいを出していた。

IMG_6049.JPG


 豚たちの他に、ガチョウもダチョウもいたが、すぐ見えなくなった(ガチョウは夕方の散歩の時間だったらしく群れで出歩いていた)。

IMG_6058.JPG

 いろんな動物がいて、オリーブの樹木や畑や牧草地に囲まれている、いかにもヨーロッパの農園という空気がただよっている場所だ。それも、きれいに見栄えを整えられたゴミ一つ落ちてない観光向けの農園ではなく、古タイヤ、ビニールシート、古ドラム缶利用の水飲み場など、飾らない普通の農場の日常の姿である。

食卓を囲んだ人たち
 さて、午後8時を過ぎてそろそろ夕食だ。食堂は、イスが50脚はありそうな大きな空間だった。そのうちの長いテーブル1つを使って10人ほどで食事である。この食卓を囲んだのは、農家民宿のオヤジ(敬愛を込めてこう呼ばせてもらう)、ナポリから来たという中年の夫婦、ミラノかどこかの建築家父子、そして近所に仕事で来て滞在している若い兄ちゃん2人組。
 大皿で料理が運ばれてきて、各自で取り分けていく。テーブルには赤ワインとミネラルウォーターとパンとチーズが置かれている。

前菜
 ここの前菜の野菜は感動的に美味しかった。食事しながら聞いていると、この農場はかなり昔から有機農業をやっているそうで、そのおかげだろうか。ここの有機農業については、オヤジの語りとともに後に触れよう。
 とりあえず、前菜の並んだ様子はこんな感じである。

IMG_6060.JPG

 最初に、そしてこの日、最大に感動したのが、このトマトである。オリーブオイルとハーブで和えただけのシンプルさ。これを、サルディーニャ独特の薄くてパリパリのパン=パーネ・カラザウにのせて食べる。

IMG_6061.JPG


 このトマトの味はなんと表現したらよいのだろう・・・。ふだん、「うまい」と思うトマトは、たいてい濃ゆい味で、甘味や酸味のインパクトで判断してしまいがちだ。ここのトマトは、そういう基準を適用できない、全く別世界のおいしさだった。トマト自体の味はそれほど濃くないし、甘味も酸味も強烈ではないのだが、そのバランスがよく、うま味はしっかりあって、後味はあくまでさらっと、口のなかから蒸発してしまうような見事な消え方だった。使われているオリーブオイルが効いているのだろう。この上質のオリーブオイルも、もちろんBio(有機)で、この農園産だということだった。それで完璧なまでにトマトとオリーブオイルが馴染んでいるのだろうか。
 少し柔らかくなったトマトと、オリーブオイルが橋渡しをして、パリパリのパーネ・カラザウと一緒に口に入れると、心地よい食感を楽しめる。塩けもほとんど感じないが、これをバクバクと食べ続ける。どこまでもいけそうな、体に馴染む味だった。
 次にピーマンのマリネ。ビネガーの酸味も角がなく、優しい味で、甘いピーマンが引き立って、うまかった。

IMG_6064.JPG


 茄子のパン粉揚げ。この茄子も、優しい味だがしっかりうま味があって、ジューシーだった。この火加減はとても上手だ。

IMG_6063.JPG


 サラミ。このサラミも自家製なのだろう、塩けがおだやかで、脂があっさりしていておいしかった。

IMG_6062.JPG


 ペコリーノ・チーズ。このチーズも塩分が強くなく、これだけでぱくぱくと食べられた。全体に、サラミやチーズはほんとに塩が強いと感じることがなく、自然にたくさん食べてしまう。

IMG_6066.JPG


 パンのバスケット。既に切り分けられている。
IMG_6065.JPG


プリモ・ピアット
 この日のパスタは、一見、豆のスープのような、丸い大きめの粒のパスタだった。が、不覚にもこのパスタの写真を撮り忘れていた。前菜の野菜があまりにおいしくて、それに心を奪われていたのもある。前菜を食べ過ぎて(そしてこの日は昼にまともにフルコース食っていたので)、パスタは1皿分だけでおかわりをせずに終わってしまった。後で振り返ると、非常に残念である。


セコンド・ピアット
 この日のメインは、サルシッチャ(ソーセージ)と豚肉のロースとだった。付け合わせの野菜にまた美味しいトマトが出た。

IMG_6068.JPG


 さすがに1回はおかわりをしたのだが、もうお腹いっぱいだった。その代わり、今日はこの食事のあと、食後酒をちびちびやりながら、オヤジの語りをたっぷりと堪能したのだった。


食後酒
 カフェ(エスプレッソ)を飲んだあと、お待ちかねの食後酒である。ミルト酒やレモンチェッロが出た。ミルトは独特の薬草風の香りがあるが、濃厚な赤味系の味わいもある。ここのレモンチェッロは酸味が爽やかでおいしかった。しかし、残念ながら写真はない。


食卓を囲む楽しさ
 この晩は、食べ物の楽しみよりも、オヤジの語りを聞く楽しみの方が上回っていた。そして、初めての人たちと一緒に囲む食卓が、ものすごく心地よい雰囲気だった。私はイタリア語はしゃべれないが、通訳の横澤さんは、要点を的確に訳して伝えてくれる。会話だけではなく、ワインを注ぎあう、皿を隣席にまわす等、テーブル上での無言のコミュニケーション、あるいはチームプレー、共同作業。共食という行為が、とてもスムーズに進み、会話と食事と手の動きのリズムがよかったのだと思う。

 初めて食事を共にする見知らぬ人とも、こうした場を共有できる、それは食を介して達成される素晴らしい機能といえるだろう。この意味では、イタリアに暮らす人たちは、やはり共食の経験値が抜群に高いといえる。彼らの食卓を囲む動作や会話は、食を楽しむ、という目的に最適化されているように思える。そしてその輪に、言葉の分からない異邦人としての自分が自然に迎え入れられ(加わることができ)、楽しむことができたことに、大いなる自己満足を感じていた。

 ここのオヤジがまた味わいのある大人であった。声高々に自慢はしないが、密かに誇りを持って、農園のことを語る。有機農業は20年ほど前から始めたというが、難しい思想を語ったりはしない。単に有機の方が高く売れるからやっている、というその口ぶりは、有機農業を長年続けていることへの高いプライドで裏打ちされているからこそ出てくる軽口だ。
 夜も更けて、オヤジはますます絶好調に語っている。

「ワシは妻をほんとうに愛している。もし妻がつらい目にあうんだったら、ワシが身代わりになってあげたい。もし妻が病気になるんだったら、ワシが代わりに病気になる。もし妻が連れに先立たれて悲しみにくれることになるなら、ワシが代わりに1人で悲しむ身になろう。どうだ、そこのジャポネーゼ(日本人)? ヒャッヒャッヒャッ・・・」

 こんな調子で、馬鹿話を続けている。でも、このオヤジが、うまいトマトやオリーブオイルを作っている、その揺るぎないモノとの落差がまたほほえましい。こういうオヤジは、高知にもよくいるなあ・・・○×のおんちゃんみたい・・・と何人かの顔が思い浮かんだ。

 夜中12時を回ったぐらいだろうか、部屋に戻って眠りにつく。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり8(ヌラゲとリストランテ) by のざけん

 農家民宿イル・シニスを出発し、次の農家民宿「Santu Marcialis(サントゥ・マルチャリス)」に向かう。方向的には南東を目指し、オリスターノからカリアリ方面に戻ることにななる。その途中、ヌラゲを見物していくことになった。「nuraghi(ヌラゲorヌラーゲ)」は、古代サルディーニャの先住民族が残した石積みの要塞である。

IMG_5922.JPG


 サルディーニャ南部の内陸のなだらかな丘陵地帯にあるBarumini(バルミニ)のヌラゲである。巨大な石積みの遺跡だ。いちおう観光地らしく駐車場があり、小さな事務所や併設された土産物ショップが1軒だけある。でも、それだけだ。それ以外に軒を連ねる土産物屋もなく、代表的な遺跡といっても、周囲はごくあっさりしたものである。
 ヌラゲの中に入るのはコントロールされているらしく、数十分に一度、ガイドに率いられて入っていく。この時は数十名ほどいて、イタリア語ガイド組と、英語ガイド組の2グループに分かれた。英語ガイドは若い女性で、明るく丁寧に一生懸命英語で説明してくれて好感がもてた。

IMG_5925.JPG


 中に入ってみると、思ったよりも複雑な構造になっていて、内部の通路や部屋がいくつもある。聖なる泉もあった。石積みの技術としては、非常に高度な造りであり、この要塞を作った民族の文化はかなり進んだものがあったようだ。が、その民族は文字を残さず、どういった社会を形成していたのか詳細は全く不明らしい。

IMG_5930.JPG


 このヌラゲ時代以降、サルディーニャにやってきたのは、ギリシア人、フェニキア人、そしてローマの植民地時代に続く。イタリアの都市国家ジェノヴァや、スペインが支配していたこともあったようだ。特に、サルディーニャの北西部は、スペインのカタルーニャに支配されていてスペイン文化の影響が強く残っているらしい。今回の滞在では、北西部あたりには行くチャンスがなかったのだが、将来ぜひ訪ねてみたいエリアである。

IMG_5956.JPG


 サルディーニャには、こうしたヌラゲが7000箇所もあるという。それ以外にも、前にみたようなフェニキア人やローマ人の遺跡などもたくさんあり、古代から近代まで、島全体が考古学や歴史学の貴重なフィールドとなっている。ヨーロッパの人々にとって、サルディーニャは、彼らの歴史を肌で感じるロマンあふれる島なのだろう。
 このヌラゲの石積みは確かに素晴らしい技術だが、同じ石積みの文化として、日本の棚田も見劣りはしない。棚田の石積みは、日本文化として誇るべきものだと思う。(棚田blogだから言うわけじゃないですが)

軽食のつもりのランチが・・・

 このヌラゲを見物して駐車場に戻ってみると、車の窓枠に小さな紙切れが挟まっている。付近の飲食店の宣伝カードだった。この日の昼飯は、今晩の農家民宿の夕食に備えて軽く済ませよう、と心の中で決めていたので、店の選択は成り行きまかせ。結局、このカードの店で昼食をとることにした。

IMG_5960.JPG


 看板には、Bar・Pizzeria・Ristoranteと表示されている。広い芝生の庭があり、店の作り自体も大きかった。先客はいなかった。営業しているのだろうか・・・と疑いながら、店に入り席に着く。

 メニューを見てみると、思ったより本格的な料理が載っていて、今日の方針をあっさり転換した。ここの料理を攻めるべし。

前菜

 前菜は、盛り合わせを注文し、他にプロシュート(生ハム)を付け加えた。イル・シニスでの食事は魚介が多く(サラミや子豚の丸焼きは出たのだが)、今日はたっぷり肉を食うぞ、という気分だった。
 前菜の盛り合わせは、それぞれ別の皿に分かれて出てきた。

 まず、焼き茄子にトマトソースを塗った皿。茄子は歯ごたえよく食べ応えがあり、味わいもしっかりしたものだった。サルディーニャの風土なら、茄子も当然うまいはずだ。

IMG_5965.JPG


 タマネギのマリネ。普通の色のタマネギだった。

IMG_5968.JPG


 カラフルなピーマンのマリネ。

IMG_5971.JPG


 茄子はもう一種類。マリネだったが、酸味はきつくなくあっさりした味付けで、やはり茄子自体のうまさで食べさせる料理である。

IMG_5974.JPG


 プロシュート(生ハム)。これはサルディーニャ産のものだった。あまりスモーキーな感じはなく、塩辛くもなく、シンプルな赤身の旨味で勝負という感じである。

IMG_5967.JPG


 パン用に置かれてあったフレッシュなチーズ。幾つかのチーズを混ぜたものだったと聞いたような気がしたが、詳細は忘れてしまった。

IMG_5976.JPG


プリモ・ピアット

 まずは、トマトソースにキノコの入った粒々のパスタ。パスタフレーグラというこのつぶつぶは、案外にこのソースに合っていて、おいしく食べられる。横にあるのは、サルディーニャのパン=パーネ・カラザウである。

IMG_5979.JPG


 次に、キノコのトマトソースのタリアテッレ(幅広麺)。このソースも優しくておいしかった。

IMG_5980.JPG


 いも虫の形をしたパスタ(名前忘れました)にシンプルなトマトソース。このパスタも、見かけによらず(虫と言わない方がいいかもしれないが)・・・ソースの味とうまく馴染んでいて、とても美味しかった。わずかに噛み応えのある、この食感がいいアクセントになっているのだと思う。

IMG_5983.JPG


セコンド・ピアット

 これはイノシシのトマトソース煮込みである。ローズマリーは一緒に煮込まれていたが、奥に見える鮮やかな緑は、ミルトの枝である。このようにミルトの枝は、後で生のまま添えられるだけのことが多いようだ。それでも、しっかりと独特の香りがついている。

IMG_5989.JPG


 見かけは確かに、皮の脂肪の分厚い猪の肉ではあるが、ものすごく柔らかく煮込まれていた。匂いも獣肉臭くなく、味もクセがなく優しかった。筋繊維自体が柔らかくて、これは煮込み方にもよるのだろうが、それだけが理由ではないだろう。もしかして、野生の猪ではなく、イノブタ的な肉なのかもしれないとも推測する。この冬は、四万十の極上イノシシでこの煮込みにトライしてみよう。

 次に、馬肉のシンプルなソテーである。これにもミルトの枝が添えられている。この馬肉も、臭みは全くなくて、ほんとうに柔らかく、でも、しっかりと肉の旨味があっておいしかった。

IMG_5995.JPG

 そして、今日は獣肉シリーズ、最後の羊の煮込み。この羊も臭みなく、ほんとにソースと合ってて、うまかった、の一言。表現がちょっとネタ切れ。

IMG_5987.JPG

 付け合わせのグリル野菜である。やっぱり丸い茄子だった。

IMG_5999.JPG


 フレッシュのトマトがある、というので頼んだのがこれ。見かけも、日本の普通の桃太郎トマトみたいだったが、味もぼんやりとして、甘くもなく酸っぱくもなく、インパクトがない。これはちょっとはずしたようだ。

IMG_6001.JPG


ドルチェ
 まずは、原始的な?デザート。チーズを包んで焼いたお菓子である。セアダスという名前だ。その上に蜂蜜をかけて食べた。

IMG_6002.JPG


 中のチーズがほんのり塩味で、甘ったるいデザートを予想していると思い切り裏切られる味である。でも、チーズのシンプルなお菓子は、飽きのこない味で、チーズ好きにはたまらない。

IMG_6006.JPG

 次に、クリームに埋まったスポンジのケーキ。というか、ティラミスを頼んだら、これがでてきた。これって、ティラミス? 思ったより甘くなかった。

IMG_6004.JPG

 そして、フレッシュのイチゴ。このイチゴがまた凛とした固さで、フレッシュそのもの、酸味と甘みが申し分なく美味しかった。やはり、サルディーニャは、フルーツがどうやっても美味しくできる土地なのだ。

IMG_6010.JPG

 最後、これはその場では食べなかったのだが、焼き菓子系盛り合わせのバスケット。奥はアーモンドのお菓子である。

IMG_6014.JPG

 これで昼食から、思い切りコースでまともに食べてしまった。お腹いっぱいである。ワインは、ハウスワインだったか適当に注文した。

 最初に店に入ったときは先客がいず、私たちだけだったが、後で2組ほど来客があった。彼らは、パスタだけとか、さっさと食事を終わらせていた。

 食事が終わったのは午後3時をまわっていた。これから晩飯の時間までになんとか消化して胃袋を空けないといけない。農家民宿に向かう車のなかで、(横澤さんの運転で安心して走る横で)すっかり習慣になってしまった食後の昼寝をする・・・・

| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり7(IL Sinis) by のざけん

 アグリ・ツーリズモ(農家民宿)「イル・シニス」での3日目、朝食を終えて荷造りをしてチェックアウトする。その際に、この民宿を運営している女性たちに少し話を聞いた。

「村の食堂」
 この農家民宿は、3家族で共同経営している。彼女たちが普段住んでいるのは少し離れた所で、ここまでは車で通ってきている(ここにはじいさんが1人住み込んでいた)。農家民宿を始めたのは3年前。宿泊なしでも、予約すればお祭りやお祝いのイベントのときなどの食事を提供する。つまり、予約制の村の食堂みたいなものだと考えていいだろう。イル・シニスの食堂は100人近くが入れる大きなものだった。

IMG_5908.JPG


 イル・シニスは、部屋の数が合計で5つだったか、宿泊可能人数が多くなく、やはり食堂としての存在が経営に大きな役割を果たしてそうだ。厨房はこんな感じである。

IMG_5902.JPG


 ステンレスのモダンな設備はまだ新しくきれいに掃除されている。こうした設備を整えるには補助金がでたという。モダンでピカピカの厨房と、屋外の薪で丸焼き用のレトロな設備が共存しているのが、いま現在の農家民宿の姿を象徴しているように思える。

農家民宿としての料理
 ボラやチヌなど、たぶん地元の素材ばかりだったはずの料理の内容について聞いたが、農家民宿としてのポリシーと同時に、地元でやっていくための配慮が感じられた。例えば、お客さんから、サルディーニャ名物のアラゴスタ(伊勢エビ)を要望されたりするが、そういうリクエストは断っている、ということだった。わざわざ外から食材を買い付けたりしない。農園と地元の素材を提供する、という明確な姿勢である。
 それは付近のレストランなどへの配慮でもあるようだ。最近は、各地の農家民宿が繁盛しているらしいのだが、その結果として、やはり周囲のレストランなどとの関係も微妙になっているという。だから、きちんと線を引いて農家民宿としての範囲を超えないように意識している、ということだった。
 逆に言えば、イタリアでは、農家民宿の料理(家庭料理)とレストランの料理には、それほど大きな隔絶はない、ということだ。地域外から仕入れた高価な食材を使うかどうか程度の違いで、料理の技法や内容は、イタリア料理の場合ほとんど共通しているのではないだろうか。素材を活かしたシンプルな調理法が基本なのである。ある面では、屋外で薪の火で豪快に丸焼きするなど、農家民宿だからこそ可能な方法もある。こうした料理が、レストランより割安でお腹いっぱい食べられるとなれば、農家民宿の人気が出て当然だろう。

IMG_5914.JPG

(イル・シニスの食堂に飾られていた伝統的なザル)


設備と料金
 イル・シニスでは、ダブルベッドの部屋を1人で利用した。部屋にはテレビや冷蔵庫があり、トイレ、洗面台、シャワーブースがあった(バスタブはない)。部屋は独立した離れ状態に2部屋が並んでおり、テラスには大きなテーブルと椅子、洗濯物干しがあった。部屋の内部の写真は残念ながら撮り忘れてしまった。外のテラスの写真がこれ。

103_0304.JPG


 今回の滞在は、ちょうどお祭りの時で、夕食ではなく昼食と朝食が提供された。1泊2食付きの料金が、ダブルのシングルユースで67EURO、2名1室なら57EUROだった。1EURO=135円として、それぞれ9000円、7700円である。イタリアの物価は、実感として日本よりも若干高く(実際にスーパーをめぐってみてチェックした)、この料金も安くはない水準である。が、ホテルに宿泊してレストランで食事をすることに比べれば、農家民宿は割安で、満足感も高いといえるのではないだろうか。

 今回のサルディーニャの旅では、他に農家民宿2軒をめぐる予定であり、後ほど、それぞれの特徴を整理して報告したい。
 例えば、これはローマの大きな書店の棚の様子である。アグリツーリズモ(農家民宿)のガイド本だけの棚があり、何種類ものガイドブックが置かれていた。

101_0119.JPG


 この中で3冊ほど購入したのだが、そのうちの1冊は「Bio(ビオ)」のアグリツーリズモのガイドブックだ。Bioとは、有機農業のことを意味していて、これは有機農家の民宿ガイドである(9.90EUROだった)。

IMG_0850.JPG

 さて、イル・シニスの2泊3日の滞在を終えて、次の農家民宿に向けて出発する。そこは、イル・シニスとはまた違ったタイプの個性的な農家民宿だった。もちろん料理もうまかった・・・


| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり6(IL Sinis) by のざけん

 農家民宿イル・シニスの2日目の朝。早起きして庭や農園を散歩してみる。すると、こんな光景が・・・・
655_5520.JPG

 昨日の食事に出たメロンである。この状態で数千個が畑の隅に無造作に野ざらしされている。やっぱりここでは、メロンなんか簡単に美味しいものができてしまうんだ・・・と納得させられる大量の野積みである。サルディーニャの大地の恵みの豊かさ(そしてその恵みを受け取る人々のおおらかな適当さ)が実感できた。

655_5501.JPG

 大きな農園らしく、でかいトラクターや農機具類が置かれている。猫が登っているのは、なんとリンゴの樹であった。このあたりの温度帯で出来るリンゴの種類なのだろうか。

 その時、畑の彼方を、なにか小さな動物が数匹、横切っていった。じっと目をこらすと、子犬のように飛び跳ねて逃げていった(まさにキャンキャンという声がぴったりの子犬の動きだった)。

655_5512.JPG

 それは子豚だった。昨日の丸焼きの子豚も、その朝まではこんな風に、農園の中を元気に走り回っていたのだろう。この写真は柵があるが、さっきのやつらはこの柵をこえて、畑の方に走っていった。放し飼い状態の幸せな幼児時代の真っただ中のやつを頂くのだから、食べる方も幸せな気分にならないと申し訳ない。次からも、ちゃんと食べて幸せに感じるから許してくれ、子豚たち。

102_0283.JPG

 駐車場の生け垣は、サボテンだった。サボテンに実がついているのを初めて見た。後日、実際に食べる機会があったが、この実はフルーツとして食べられる。サボテンの下には、これまた無造作にブドウがたわわに実っている。この土地なら、ブドウもほったらかしで、糖度の高いものが出来そうだ。

 さて、食堂で朝食である。朝食は、パンと、蜂蜜やジャム、それからフルーツと、カフェ(エスプレッソ)とミルク。シンプルな朝食スタイルである。

655_5572.JPG

 午前中は洗濯をしてから、前述のタロス岬に出かけた。イル・シニスでは今日も夕食はなく、昼食が出る(お祭りの時は豪華な昼食となるので)。間に合うように戻って、食堂にはいる。昨日よりはお客さんの人数も少なくて(それでも50人以上はいた)、賑やかさも控えめだ。

前菜
 今日も前菜が何種類もまわってくる。まずはムール貝やアサリ、そしてボッタルガが今日も出た。
103_0326.JPG


 次にタコとパプリカのオイルマリネ。かすかな酸味だけで、基本はオリーブオイル。塩味もごく薄かったが、タコの甘みで十分にうまかった。
103_0328.JPG

 そして、また出た、鮫のトマトソース煮込み。すっかり馴染みの味である。
103_0329.JPG

 赤タマネギのマリネもまたまた登場。これも柔らかな酸味でよいアクセント。食べ飽きない。

103_0330.JPG

 イカとエビのフリット盛り。これも、ふわっと上手に揚げられていて、ばくばくと食が進む。

657_5709.JPG

 そして、今日の料理で、というよりもサルディーニャの魚料理で最も印象に残ったのがこれである。

656_5697.JPG


 蒸しウナギのペコリーノ・チーズかけ。この組み合わせは全く意表をつかれたのだが、正直に、めちゃくちゃうまかった。鰻は単にブツ切りで蒸しただけだが、その上にかけられたペコリーノが絶妙の味付けになっている。ペコリーノは、細かな粉状ではなく、手動鉛筆削り器で削ったぐらいの、薄いカンナ屑状態である。ペコリーノがこの状態というのもミソだろう。まるで雪の結晶が融けるように、蒸しウナギの余熱で溶けて馴染んでいく。

656_5699.JPG

 この鰻ペコリーノを四万十の天然鰻でやったら、どんな美味しさになるだろうか。そしてこの両者のコンビネーションに驚く、あの人の顔も見たい。大いに楽しみである。密かに企画を練っているので、誘いの声がかかった人は密かに歓喜するように。
 これまでも魚料理に使うチーズはペコリーノがいい、と自分で料理しながら思っていたのだが、やはり相性がよかったようだ。ペコリーノは羊乳から作られるチーズで、豊かなミネラル系の塩味を感じることが多く、これはやっぱり海のものにあわせるべきだと感じてきた。パルミジャーノだと少しコクが出過ぎて、魚介の出汁を上回ってしまう気がする。
 この鰻ペコリーノは、前菜の扱いらしく、この後にパスタが続いた。

プリモ・ピアット
 まずはアサリとトマトのペンネ。トマトはご覧のように、ごく少量で、ソースにはならない程度である。アサリの出汁のうまみだけで、塩味もきつくなく、あっさりとしているが、トマトの味が繊細な余韻になっていた。

103_0337.JPG

 次は同じくペンネだが、トマトソースで、ペコリーノの粉をかけて食べた。

103_0340.JPG

 もう1種類、トマトソースの蝶のパスタ(ファルファッレ)も出てくる。これもまたソースが優しく、いくらでも食べ続けられる味だった。この日は、パスタだけで、かなりの量を食べ続けることになった(メインはたぶん子豚はないだろうと予測していたので)。

103_0333.JPG

 今日もテーブルの上には、赤ワインしかない。この赤ワインは、軽めでさらっと飲めるのだが、やっぱり白が欲しくなる。赤ワインが常温で出されることも影響しているのだろう(室内気温29度ぐらいの感じだ)。少し冷えてたらこの赤ワインでも、それなりにガブガブ飲めていいかもしれない。と思ったら、そうそう、テーブルにはこういうモノも置かれている。

103_0352.JPG

 冷えたミネラルウォーターである。このピンクのラベルは、他の場所でもよく見かける銘柄だった。この冷えたミネラルウォーターで、赤ワインを割って飲んでみると、ちょうどぐらいの温度と濃さになった。以後は、他の場所でもこの方式で、白ワイン替わりに赤の水割りをがぶ飲みすることにした。

セコンド・ピアット
 今日もメインの前に、例の細長い小さな果物系トマトが出てくる。やっぱりこのトマトうまい。口直しとして、ほのかな甘みと果物の香りがほんとにばっちりはまっている。

103_0344.JPG

 今日のメインも魚介のグリルである。昨日と同様、「の」の字のウナギ、チヌ、エビ、そして小さなイカが出た。

103_0349.JPG

 魚介だけで終わりかと思っていたら、肉も出てきた。子豚ではなく、大人の豚である。しっかり火が通っていて、硬めに焼いている。肉自体も、噛みごたえのあり、筋繊維がしっかりしている放し飼い豚なんだろうな。あそこにいたやつかな・・・・

657_5715.JPG


 今日の昼食も、お祭り時の食事で、賑やかに美味しく楽しめた。
 が、隣のテーブルについた同宿のミラノの家族の一部は、なんともさえない顔をしている。特に若い女性はあまりしゃべらず不満がありそうだった。どうも、この魚づくしの料理が苦痛らしい。もう1週間もこの民宿に滞在していて、魚が嫌いだとそれは大変だろう。

 部屋に戻って、夕方のお祭り行列に備えて昼寝をする。祝日の豪華な昼食と幸せな午睡のペースにすっかり馴染んでいる。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり5(San Salvatoreの祭) by のざけん

 アグリ・ツーリズモ(農家民宿)「イル・シニス」滞在初日。近くのSan Salvatore(サン・サルバトーレ)の教会でお祭りが行われていて、見物に出かける。下は、民宿のおじさんが壁から剥がしてプレゼントしてくれた、このお祭りのポスターである。
103_0305.JPG

サルディーニャ独特の「田園の教会」
 このサン・サルバトーレ教会のお祭りと、サルディーニャ独特の「田園の教会」について触れた文献があるので、簡単に紹介しておこう。
 陣内秀信『南イタリアへ!』講談社現代新書、1999年
  ISBN:4061494465 \840(税別)
 陣内は、建築史・都市史が専門で、ヴェネチア研究を中心として、イタリア各地の街についての著作を何冊も出している。特に、イタリア各地の中小都市の魅力とその活力の源を、建築系だけでなく幅広い視点で分析した『イタリア 小さなまちの底力』講談社、2000年(ISBN:4062101485 \1700)は、日本の「地方都市」や地域社会の未来を考える上で、重要なヒントとなりそうな内容である。関係者(と自認する人)はぜひ読んでほしい。もちろん、イタリア観光の際にも役にたつ。これを読んでおけば、イタリアの街歩きの面白さが数倍に膨らむだろう。
 陣内『南イタリアへ!』の第11章がサルディーニャの「聖なる場所」についての記述である。その中に、このサン・サルバトーレ教会のお祭りが登場する。それによれば、この教会は、古代ローマ以前の「ヌラゲ」時代の「聖なる場所」で、教会の地下には、信仰の対象となった井戸があるという。その井戸の上に、後にやってきたローマ人たちが教会をたて、聖なる場所として受け継いだらしい(今回、私たちは、この教会の中には立ち入らなかったので、外から見るだけでは、地下に井戸があるということは全く想像ができなかった。外側から撮影した教会の中の様子は以下)。
654_5478.JPG

 社会学や文化人類学的にみると、こうした井戸(湧水=泉)への信仰は、広い意味での自然神崇拝だと考えられる。土地=大地の神を祀るのだ。キリストを神とするキリスト教以前の、アニミズム(自然神や精霊崇拝など「原始宗教」)である。
 そして、サルディーニャ独特の「田園の教会」とは、都市の郊外に、その街のルーツとなった集落跡があり、そこにある教会のことを意味している。街に住む人たちが、お祭りの時に、その街の聖人(イタリアの街にはそれぞれの聖人が決まっている)を、かつての集落の教会に運び、数日を過ごして、また聖人を運び戻してくる。この祭りには、自分たちのルーツを確認するという意味が込められているのだろう。
 今年の3月には陣内ほか共編で『地中海の聖なる島 サルディーニャ』山川歴史モノグラフ4、2004年(ISBN: 4634649209 \3150)というサルディーニャについての本が出ている。豊富な写真が入ったビジュアルにも美しい本だが、内容はサルディーニャの風土、とくに民家や街の成り立ちなどについて専門的な内容が分かりやすく紹介されていて面白く読める。

サン・サルバトーレのお祭り(初日夜)
 さて、農家民宿からすぐ近くのサン・サルバトーレのお祭りでは、既に近くの街Cabras(カブラス)から聖人が男たちによって運ばれてきていた。それを運んだ男たちの一団と、この日の昼食を農家民宿の食堂で共にしたわけだ(前述)。
 この夜は、サン・サルバトーレの教会の横の広場でなにかイベントが行われるようだ。夜9時ごろから出かけてみると、集落の入口から露店の灯りが続いている。広場まで行ってみると、イベント会場らしくステージが設営されていた。
102_0274.JPG

 簡素な照明と音響セットは、日本の田舎の学校のグランドでやる夏祭りの雰囲気である。その周囲にたくさんの人が行列している。その先では・・・・
102_0276.JPG

 ボラが焼かれていた。大量に、頭を揃えて。この焼きボラが配られるらしい。みんな並んでいるが、そんなにボラが食べたいのだろうか・・・やっぱり、祭りの時はボラを食べるものなんだろうか・・・
654_5469.JPG

 この日の昼食で2匹分の焼きボラを食べ(それ以外にもたくさん)お腹はまだ全然すいてなかったし、さすがに今日はもうボラはいいや、という気分だったので、この行列には並ばずに、周囲をぶらぶらする。

熟成ヴェルナッチャ
 すると、付近のおっちゃん達の集団の1人に手招きされ、白いプラスチックカップの飲み物を勧められる。受け取って飲むと、初めての味わいの酒だった。これはなんだ??
 樽から注がれて、樽香がもちろんする。それ以外にも、ハーブ系の香りだろうか、強い匂いがする。そして、アルコール度数自体が高かった。20度ぐらいありそうだ。甘い香りの要素があるのに、味は辛口ドライで、それだけでなはく、ひねた感じもあり、かなり熟成しているようだ。なんとなく、日本酒の古酒にも似ている。
 これは、もしかしてミルトの葉を漬けたリキュールだろうか? とこの時は推測した。これまで飲んだミルト酒は、その実を漬けたもので、それ以外にミルトの葉を漬けた酒があるというガイド本でしいれた知識があった。
 しかし後日、偶然だが、これと同じ味わいの酒を飲む機会があり、その時に教えてもらったのだが、これはヴェルナッチャ種(ブドウ)のワインだという。んんん・・・・・。ヴェルナッチャといえば、トスカーナのVernaccia di San Gimignano (ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ)が思い浮かぶ。日本でも千円台で手に入るものがあるので、よく(水のように)飲んでいたが、爽やかな酸味の白ワインのイメージが強い。まさか同じヴェルナッチャ種なのだろうか? と半信半疑のままだった。
 よく調べてみると、オリスターノ周辺のヴェルナッチャは、DOCにもなっているではないか(Vernaccia di Oristano)。(「DOC」とは、フランスの「AOC」と同じような、一般に「原産地呼称統制制度」と呼ばれるもののイタリア版である。DOCに認められているということは、その地方の伝統的or特徴的ワインだということになる。)
 このヴェルナッチャは、どうもトスカーナのベルナッチャとは別物らしく(DNA鑑定で証明されたという記述をどこかで見つけた)、それでこの味わいも納得がいった。DOCの分類を見てみると、Vernaccia di Oristano には何種類かあり、熟成させるタイプもある。アルコール度数は全体に高く、15%から高いのは18%もある。甘いデザートワインのタイプもあるようだが、私が飲んだのは、それこそ日本酒の古酒のような、ひねた辛口の熟成したものだった。
 おっちゃんは、無造作に樽から注いでくれたのだが、この樽のまま保存しているのだろう。アルコール度数の高さは、酒精強化(アルコール添加)したシェリーや、シチリアのマルサラ・ワインに通じるところがありそうで、樽のままで(空気が入っても)長期の保存が可能なのだろう。後日飲んだヴェルナッチャは熟成10年以上ということだったので、それから推測しても、この時のヴェルナッチャは同じ年数ぐらいの熟成だったような気がしている。
 この時は、おかわりをすすめられ2杯飲んだ。見るからにアジア系のわたしが、おいしそうに飲み干すと、おっちゃんは満足そうな表情で、喜んでもらえたらしい。「ジャポネーゼ(日本人)」とこちらが言うと、おっちゃんは周囲の人に何か言って、みんなが微笑を返してくれた。
 残念ながら、この時のヴェルナッチャの画像はない。琥珀色のワインだった。

蜂蜜
654_5475.JPG

 広場に出ている露店をのぞくと、瓶入りの蜂蜜を売っていた。味見させてもらう。3種類分を味見したのだが、それぞれ濃厚で、でも後口はさらっとしておいしかった。ちょっと苦み系の味がするものもあった。一つずつ3種類の小さな瓶を購入する。
654_5477.JPG

 夜11時近くになっていたと思うが、まだイベントらしいものは始まりそうにないので農家民宿にもどる。深夜になにかやっていたらしく、遠くから賑やかな音が聞こえてくるが、この日は早く寝た。

カブラスへの行進(2日目夕方)
657_5724.JPG
 お祭りの続きは翌日の夕方。サン・サルバトーレの教会から男たちの手によって聖人像がカブラスに運び戻される。この光景を見物しに行った。
657_5733.JPG

 大人から子供まで、男たちが白い衣装に身をつつんで、走り出した。カブラスの街まで8kmほどを行進していく。
657_5741.JPG

 この出発を見送ってから、私たちは車で先回りをしようとカブラスの街に向かう。
657_5750.JPG

 教会の前に到着して、夕暮れ時、しばらく待っていると、聖人を運ぶ男たちの行列が到着した。
657_5768.JPG

 見物人はいつの間にかふえていて、2〜3千人はいただろう。行列の中には、農家民宿のおっちゃんもいて、お互いに気がついて声をかける。
657_5772.JPG
658_5807.JPG

 教会の中は、鮮やかな花が飾られていて、美しかった。
658_5817.JPG


女たちの行進(3日目朝)
 サン・サルバトーレのお祭りは、男ちの行進だけでなく、女も同様に行進をする。早朝にまた教会に出かけて見物する。
IMG_5833.JPG


 白一色だった男たちとは違って、女性の衣装は様々だ。幾つかの系統のアレンジがあった。
IMG_5844.JPG

IMG_5845.JPG

 教会でのお祈りの後、行列が出発する。
IMG_5852.JPG

 男たちの行列は走ったが、女性は歩いている。明け方の畑の中を女たちの行列が静かに進んでゆく。
IMG_5861.JPG
IMG_5866.JPG


集落の形
IMG_5887.JPG

 サン・サルバトーレの集落は独特の形をしていた。家々が城壁のように連なり、「の」の字形をして、その中心に教会と広場がある。家が壁となって、教会を取り巻いている、あるいは教会を守っているようにも思えた。家の中をのぞいてみると、このように長屋形式で、奥に長く続いている。
IMG_5885.JPG

 この写真のようにテレビなどの電化製品があったり、家具や食器があったり、実際に生活が行われているように見える。お祭りの夜には、この家の中で宴会をやっていたところもある。しかし、後に農家民宿の人たちに聞いてみると、普段はこの集落には住んでないらしい。お祭りの時だけ古い街が賑やかになるのだろうか。先の陣内の記述によれば、「田園の教会」の周囲には、こうした家々があり、お祭りの期間だけ祈りのために使われているという。最近は、祭りの時期以外でも、夏期を通じて一族で別荘のように使う、そのために整備をする、という事例も多くなっているらしい。

 このように、サルディーニャは、お祭りにしても、集落にしても、伝統的な衣装にしても、独特のテイストがあり、ヨーロッパの古層を感じさせるものがある。今回の滞在では、他の村の祭りを見る機会があったが、そこでも同じような、いにしえの感覚を受けることになった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり4(タロス岬とビーチ) by のざけん

 アグリ・ツーリズモ(農家民宿)「イル・シニス」での初日、大満足の昼食を終えて昼寝した。夕方5時頃から、近くのビーチに出かける。イタリアはこの時期サマータイムで、通常より1時間すすんでいる。日差しは黄昏れてきてはいるが、まだまだ暑い。車で5分ほどで、サルディーニャのほぼ最西端のビーチに到着。シニス半島のArutasという名前のビーチだった。
102_0268.JPG

色鮮やかな粒石のビーチ
 駐車場はあるが、海の家のような施設はなく、いきなり砂浜が続いている。夕方だが、ビーチにはたくさんの人がいて、のんびり遊んでいる。とりあえず軽く泳ぐ。海水をなめると、心なしか、塩分が濃いような気がする。海水はかなりきれいである。
 そして、ここのビーチは、砂ではなく、色鮮やかな小さな丸い粒々の石でできていた。砂のビーチとは一味も二味も違う美しさだ。
102_0270.JPG

ビーチでのバカンスの過ごし方
 このビーチにいたのは、ほとんどヨーロッパ系のバカンス客だろう。アジア系は私たちぐらいだ。リタイア組の年配のグループなど、全体的にビーチにいる人の年齢が高い。じいさん・ばあさん、いい歳のおっちゃん・おばちゃんも、堂々と水着でのんびりくつろいでいる。こういう光景は、日本では目にすることがないだろう。若者もいるにはいるが、それほど目立たず控えめな遊び方・はしゃぎ方である。全体に、欧米人のバカンスでのビーチでの過ごし方は、単に「のんびり」するだけのようだ。家族や親しい友人たちと、のんびりゆったりと、特別なことはなにもせず、ビーチで過ごし、美味しく飲み食いするだけである。変に欲張ることなく、がつがつしない。それが長期のバカンスの過ごし方のようだ。

ヨーロッパでは有名なサルディーニャのビーチ
 サルディーニャには美しいビーチが数多くあり、それを目当てにヨーロッパ中からバカンス客が訪れている。日本では、サルディーニャという土地自体がまだまだあまり知られていないが、ヨーロッパ圏では、夏のバカンスを過ごす憧れのリゾート地として認識されているらしい。映画『グラン・ブルー』の舞台がサルディーニャの海である。島の北部は、コスタ・ズメラルダ(エメラルド海岸)と呼ばれ、いわゆる高級リゾート地となっていて有名人の別荘も多いらしい。が、コスタ・ズメラルダに限らず、サルディーニャには島全体のそこかしこに美しいビーチが存在している。今年の7月、イタリアの美しいビーチについて豊富な写真で紹介した本が出版されたが(机直人『イタリア魅惑のビーチ』東京書籍ISBN: 4487799449、\1890)、この本で、イタリアで最も美しいビーチとして冒頭にまとめて紹介されているのがサルディーニャである。ビーチの美しさにはまって写真家になった著者が太鼓判を押すのもうなづける。このArutasというビーチも素晴らしかった。

 1時間ほどビーチにいて、イル・シニスに戻る。夜には、すぐ近くのサン・サルバトーレに夜店が出たり広場でイベントがあるというので出かけることになるが、また次回に。

 翌日の午前中、このビーチの近くのTharros(タロス)岬を見物に行った。この岬には、古代フェニキア人やローマ人の遺跡があり、考古学的に貴重な場所らしい。確かに、地中海に突き出た岬で見晴らしがよく、港町としてよい立地である。
103_0311.JPG

 この岬のすぐ下にも砂浜があり、人々が集まっている。小さなプレジャーボートも多数あつまっていた。岬の上から見ると、海の底の方まで透けて見えていた。
103_0319.JPG


| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり3(Il Sinis) by のざけん

 サルディーニャ2日目の午後から、いよいよアグリ・ツーリズモ(農家民宿)での滞在になる。昼前にカリアリを出てOristano(オリスターノ)方面に向かう。
 サルディーニャ州は、歴史的に4つの地域に分かれていて、現在でも4県、そしてサルディーニャ州のシンボルマークは、赤い十字のそれぞれの象限に4人の男の横顔が描かれている。このマークはサルディーニャ関連のいろんな場面で目にする。
sardo4.jpg

 4つの県のうちの一つがオリスターノ県、その県都の名前もオリスターノである。オリスターノは、サルディーニャ西岸の真ん中(南北の中央)の海に面した小都市である(イタリア地図)。
IMG_7150.JPG

オリスターノ方面へ平原100kmのドライブ
 この日から2泊3日で滞在する農家民宿「Il Sinis(イル・シニス)」は、オリスターノから10kmほど先のSan Salvatore(サン・サルバトーレ)という海沿いの小さな集落のそばにある。通訳兼ガイドの横澤さん(会社のHP)の車と運転で、カリアリを出発し、国道を北西方向に進む。オリスターノまでおよそ100kmである。
 国道といっても、ほとんど高速道路みたいなもので、幅広く平坦な道を快適にドライブする。制限時速は80kmと表示されてはいるが、流れにのった状態で120kmぐらい出ている。さらっと追い抜いていく車は、140km以上出ているはずだ。ちなみに、こちらの車は(レンタカーも含め)ほとんどがマニュアル・ミッション(MT)で、オートマチック(AT)車は稀である。横澤さんの車もMTだが、スムーズに運転していて、安心してドライブを楽しむことができた。
 国道を高速でドライブしながら、周囲の風景を眺める。大きな平原部で、多少の起伏があり、少し離れたところには数百mクラスの山々が並んでいる。山は、低木もまばらにあるが、その緑よりも、乾燥した地肌があらわになっている部分が多い。高い木や深い森は見えない。国道の周囲は、刈り取られた後の麦畑が続き、枯れ草色の大地が続いている。畑の間に、ぼつぼつと緑の木々が並ぶ。ところどころに葡萄畑らしい低い緑の木々の列がある。これがサルディーニャの大地だ・・・ちょっとした感慨がわく。
IMG_6811.JPG

サルディーニャの風土と農業
 農業の条件から言えば、こういう乾燥した土地と、日差しに恵まれた暖かい(暑すぎない)気候は、甘くて美味しい野菜や果物が出来て当然の、いわば成功が約束された環境である。乾燥した土地では、農作物の旨味や甘みは自然に凝縮される。枯れないように最低限の灌水さえすれば、甘いトマトや果物がさほどの苦労なく収穫できる(しかしポンプや灌漑設備が整う近代以前はこの灌水が最大の困難だったはずだ)。

 乾燥していると、病害虫の発生も少ないし、なにより雑草が繁茂することがない。それに比べて、日本の気候はあまりに湿気が多すぎる。雨にあったトマトは水ぶくれで破裂し、病害虫やカビがはびこる。なにより勢いのよい雑草に作物が埋もれてしまう。日本では、この湿気や雨との闘いが、そのまま農業の厳しさに直結している。水分は作物の成長になくてはならないものだが、過剰な水と湿気は、(人間の営みとしての)農業の重荷になる。

 このサルディーニャの乾燥した暖かい風土では、人々はさほどの労なく甘いトマトやブドウや果物を収穫することができるだろう。そして、こうした恵まれた農業の条件は、おおらかな人間性を育むのだろう。現実に、サルディーニャの産物とそこに暮らす人々の雰囲気は、この想像を裏切らなかった。
 しかし他方で、恵まれた土地のイメージの対極にあるのがサルディーニャの内陸部の山岳地帯、Barbagia(バルバジア)と呼ばれる地域である。ラテン語で「野蛮人の地」を意味するという広大な山岳地帯は、牧羊ぐらいしかできない荒涼とした大地である。バルバジアについてはまた後日触れる。

オリスターノからサン・サルバトーレへ
 さて、なにはともあれ、いま向かっているのは、海沿いの農家民宿「イル・シニス」である。オリスターノに近づくと、内陸の乾燥した大地とは違って、緑が少し多くなってくる。沿岸部の低地に池や沼地が見え、その周囲には草が茂っている。これまでの枯草色とは違って、鮮やかな緑の世界である。
 オリスターノから農家民宿までは、地元に住むシルベストロさんの車に先導&案内してもらった。シルベストロさんは、今回のサルディーニャ滞在の手配やガイドでお世話になったもう1人の日本人・藤田智子さんのパートナーであり、州の農業機関(ERSAT)に勤めながら自分で大きな農場も経営している(いわば兼業農家)。ERSATというのは、日本でいうと県の農業関係の部局あたりで、農業改良普及員の仕事に近いと思う。農家民宿への支援も仕事らしい。藤田智子さんは、イタリア各地の農家民宿の厨房で料理の研究をして、いまはサルディーニャを中心にした食材の輸入販売や、ガイドの仕事をしている(会社のHP)。今回のサルディーニャ滞在の後半は、藤田さんにガイドや手配をお願いしたが、この日はシルベストロさん1人に案内してもらった。
 実は、ちょうどいま(〜10月12日)、新宿の伊勢丹でイタリア・フェアが開催されていて、そこに藤田さんの会社もブースを出して、サルディーニャのオリーブオイルやボッタルガ、その他の選りすぐりの食材を販売している。東京近辺の方、イタリア食材の調達にぜひどうぞ。

日本で見慣れた風景・・・
IMG7434.JPG

 オリスターノの町はずれから、車2台を連ねて、農家民宿のあるサン・サルバトーレに向かう。海沿いの道で、汽水湖のそばを通る。湿地帯もあり、その周囲には、日本で見慣れた黄緑色の絨毯が広がっている。穂が黄色くなり始めた稲である。オリスターノ周辺は、イタリアでも有数の米の産地で、確かにあちこちに田圃の風景が広がっている。このあたりは、サルディーニャの他の地域と比べて湿度が少し高く、低湿地もあり、稲作の可能な気候である。

農家民宿イル・シニスに到着
 サン・サルバトーレという集落の周りには、車がたくさん停まっている。今日はお祭りであり、見物客も多いのだろう、道路には路上駐車の車が数百mも連なっている。この集落とお祭りについてはまた後ほど触れる。
 路上駐車の列が終わったあたりに、目的地の農家民宿「イル・シニス」があった。道路から背の高い生け垣で隔てられた中には、平屋の家屋と別棟が並んでいる。
654_5493.JPG

 庭に車が10台ぐらい駐車され、数十人がテラスにいて立ち話をしたりしている。
 ちょうど昼食時で、離れの部屋に荷物を置いてすぐに昼食に向かう。食堂前にたくさんいた人も既に中に入ってテーブルについている。食堂は100人近い人がいて、既に賑やかに食事がスタートしていた。この人たち全員が宿泊客なのだろうか?? 状況が分からないまま、とりあえずテーブルにつき、食事に手をのばす。

前菜
 大皿に乗せられて隣席から回ってくるのを各自が好きなだけ取り分けていくスタイルである。まずは、白身魚のトマトソース煮込み。魚は前日夜の食事に出てきた小さなサメである。やはり少し身に臭みがある。この鮫の身を、優しいトマトソースが抱いている。白身とソースがしっくりなじんでいて素直な味でおいしかった。お店の料理ではなく、家庭料理だ、ということがこの1皿目ですぐに実感できた。これが農家民宿なんだ、とわくわく感がつのる。
653_5397.JPG

 次は、期待していたボッタルガ(カラスミ)のスライスである。ボラの卵巣を塩漬けして乾燥させて作られる。厚めのスライスに、オリーブオイルがたっぷりかかっている。ボッタルガとオリーブオイルの黄金色コンビに野菜の緑が映える。
653_5398.JPG

 さすがの美味しさだ。ボッタルガは厚いスライスだが、この分量を一気に食べても、しょっぱくなく、しつこくなく、うまい。ワインとともに、ばくばくと食べ続ける。合計で何皿分か食べてしまった(日本で食べたらこれだけで数千円分!)。この土地のボッタルガの塩分はあまり高くないようで、強烈なインパクトのある味ではなく、やさしくジンワリと旨味が伝わってくる。だから、たくさん、ばくばくと勢いよく食べられるのだ。
 テーブルにあるワインは、赤しかなくて、それを飲んでいたのが、もし冷えた白ワインがあれば最高の幸せだろう・・・。このボッタルガの味にあわせるのは、やさしくほのかに甘みを感じられる、でもすっきりした白。しかし、他の農家民宿でも同じように、食事の時のワインはほとんど赤だけだった(魚メインでも)。ま、郷にいれば郷に従え。文句は言わず、その場の料理を楽しむだけである。あぁ、しかしやっぱり白ワインがほしい。このことからも分かるように、イタリアの家庭の食事では、ワインはあくまで料理の脇役であり、こだわりなく当たり前に、そこにあるものを飲む、ということのようだ。それがやはり「日常」であり、この「日常」こそが文化の土台となる。

 次にまわってきたのは、エビの素揚げ。甘みがあってうまかった。
653_5400.JPG

 赤タマネギのマリネ。これも、酸味がやさしく馴染んだ家庭の味で、さっくり柔らかい歯ごたえ(生でもなく煮込みでもない歯ごたえ)で、おいしかった。このタマネギマリネは、これ以降、サルディーニャ各地でよく出てきた。
654_5402.JPG

 次に、イカとオリーブと黄パプリカのオイルマリネ。これもイカとパプリカの甘みが馴染んで、おいしい。
 前菜は他にも何種類か出てきた。野菜のフライ、肉団子。それから、サラミ。ズッキーニのマリネもあったはずだ。
 これらの前菜で、何皿分食っただろうか。食堂の中は、さらに賑やかに、盛り上がっている。給仕に動いているのは高校生ぐらいの男の子や女の子たちで、この農家民宿を家族総出で切り盛りしているようだ。
654_5405.JPG

プリモ・ピアットのパスタ
 さて、前菜が一通り終わったところで、大皿にのったパスタの登場である。
654_5406.JPG

 イカのソースのペンネだ。このイカソースも、なんともいえず優しい味で、見た目の色ほど濃い味ではなく、魚貝の旨味を素直に出しただけの、塩分もあまり高くない、やはり家庭の味といえるものだった。
 このパスタもおかわりをした。ここまでずっと自分のペースで快適に食べられていて、この調子ならどこまでもいける、という感覚である。料理が全体に優しい味で、あまり強い味付けはなく、塩分も控えめ、こうした家庭料理そのもののおかげなんだろう。毎日腹いっぱい食べられる料理である。

セコンド・ピアット(魚)
 ここでメインだが、これまで食事に夢中になっていたため、全くメインの予想をしてなかったのだが、期待通りといえば期待通りに、魚が出てきた。焼いた魚介の盛り合わせ。
654_5412.JPG
 これはただ直火でローストしただけの魚貝の盛り合わせである。軽い塩ぐらいで、オリーブオイルもたらしてないようだ。奥に横たわるのは、例のボラである。手前の背中姿は、チヌ(クロダイ)。逆「の」字形に巻いているのは、ウナギだ。まさか、サルディーニャでウナギに出逢うとは。。。これも新鮮な驚きだった。
 ウナギのローストの腹側アップ。ウナギはいつも腹側を上にして出てきた。
654_5410.JPG

 この魚介ローストの盛り合わせ、とりあえず全部食べる。焼きボラは、もしかして人生で初めて食べたかもしれない。少しクセはあるが、十分に食べられる味の白身である。チヌはまあ日本と同じだ。ウナギも、開いてただ炭火で焼いただけの白焼きは日本でも食べることがあるが、丸のままのローストは初体験である。食べてみると、丸のままだけあって、皮はパリパリに焼けているが、中身はジューシーさが残っていて、思ったよりもいける。丸のまま、ただ直火でローストするだけのやり方は、原始的といえばそうだが、やはり魚自体の旨味が逃げずに濃縮して、味わい深いものだった。
 この時は、まったく気にもかけなかったが、後で考えてみると、ここの料理は、魚が嫌いな人にはつらいだろう。この地域では、海沿いの地域ということもあって、魚をよく食べるようだ。サルディーニャ以外からの宿泊客は、この魚づくしの料理で大丈夫なのだろうか・・・。翌日わかったが、この魚料理をそれほど喜んで食べてなかった同宿の人たちもいた。

付け合わせの野菜
このあたりで、付け合わせの野菜が出てきた。このトマトが今まで初体験のおいしさで特筆に値する。
654_5415.JPG

 ステンレスのボウルに入って出てきた小さなトマトとセロリ。これがメインの間の口直しとしてばっちりはまっていた。トマトは、少し細長いミニサイズで、酸味はなく、果物のような甘みがある。ポリポリと食べ続ける様子は、サクランボでも食べるときのような感覚だが、その味もなんとなくチェリーを感じさせる果物的なトマトだった。みんな、ボウルに手を伸ばしてはポリポリとトマトを食べ続けている。
 ちなみに、翌朝、この農家民宿の菜園で、このトマトを発見。こんな風になっている。
655_5562.JPG

セコンド・ピアット(肉)
 やっとラストらしき主菜の肉が出てきた。とりあえず超接写をご覧あれ。
654_5420.JPG

 なにかお分かりだろうか?   子豚の鼻である。そう、出てきたのはサルディーニャ名物の「仔豚の丸焼き(porcheddu)」。丸焼きといっても、既に切り分けられた状態で出てくる。
654_5423.JPG

 味付けは、軽い塩だけで、あとはほのかにハーブ系の香りがするだけである。シンプルな豚肉の味を堪能する。子豚だけあって、肉はとても軟らかい。そして、なんといっても好きな人には堪らない、パリパリの皮。余分な脂が落ちてパリパリに焼かれた皮は、肉の旨味が最も凝縮される部分だろう。この皿もかなりの部分を食べたが、さすがに全部は食べきれなかった。
 翌朝、庭をチェックすると、この丸焼きが行われた現場を発見。仔豚の丸焼きは、薪の火で焼くのが伝統だと聞いたが、その通り、屋外にちゃんとこういう設備が整っていた。
655_5531.JPG
 おそらく、魚のローストも、この薪の直火でやったのだろう。
655_5535.JPG

食後
 食後のフルーツとしてメロンが出た。細長いメロンで、けっこう硬めのしゃっきりした果肉だった。
654_5435.JPG

 それほど熟しているとは見えないのに、濃厚な甘みと旨味がある。このメロンの甘みと旨味は、これこそサルディーニャの乾燥した大地の恵みだろう。たぶん、そんなに手間をかけなくても、この美味しいメロンが収穫できるのだ。(この想像は翌朝、隣の畑に無造作に置かれた大量のメロンを見て裏付けられた)
 次に、焼き菓子のバスケットが回ってきた。黄や緑の包装紙に包まれたアーモンド団子もある。
654_5439.JPG

 そして、最後に、カフェ(エスプレッソ)と、ミルト酒である。
102_0267.JPG

 カフェは、こういった取っ手のついた小さな専用プラスチックカップで出てきた。こういう製品がやっぱり市販されているんだなあ・・・。ちなみに、この食堂では、テーブル上に最初から三枚の皿が重ねてセットしてあり、一番上はプラスチックの前菜用皿、真ん中は少し深い目のパスタ用皿、下がメイン用の皿となっていて、各段階が終わるごとに、皿だけさげられる。合理的といえば合理的なオペレーションであり、食器類もプラスチックの皿ありフォークありカップありで、全く飾り気のないものだった。農家民宿では、普通の家庭の食事が出ると思えばよくわかる。レストランでの食事とはやはり違うカテゴリーのものだと認識する。気取りがいっさいなく、普通で自然で日常だ。
 ミルト酒は、昨晩飲んだのと同じ、濃い色の、ミルトの実から作るタイプのものである。強い食後酒が胃に染みわたると、食事の満足感がさらにアップする。

 さて、最後に、この食事の際の食堂の雰囲気を描写しておこう。ちゃんと書いておくべき賑やかで楽しい食卓だった。
654_5442.JPG

 食事の合間に、酒の入ったおっちゃんのアコーディオン演奏(ただのお客さんだと思う)が各テーブルをまわり、テーブルの人を含めた合唱が始まる。その合間に、どこからともなく地響きのような、テーブルを両手で叩く音がして、だんだん拍子が速くなっていき、口笛や拍手も入り交じって、フィナーレ。これがしばらくたつとまた起こり、何度も何度も繰り返された。向こうの方では、おっちゃんや兄ちゃんたちが思い切り盛り上がっている。後で分かったが、この一団(20人ぐらい)は、サン・サルバトーレのお祭りに参加してマラソンしてきた男たちだった。彼らが「村の青年団」のノリで、健康的に無邪気に盛り上がっているのが、違和感なく受け入れられた、賑やかで楽しい食事の時間だった。

 この昼食が終了したのは食べ始めてから2時間以上、ちょうど3時間ぐらいだったかもしれない。腹いっぱいの満足感とともに、部屋に戻って昼寝をする。まさに、幸せな休日の午睡である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり2(カリアリのメルカート) by のざけん

 サルディーニャ・カリアリの2日目。朝食はホテルのロビー横のカフェ(というかBar)で、カプチーノとクロワッサン。この石造りの天井がとてもよい雰囲気。
102_0216.JPG

 ホテルを出て、歩いてカリアリのメルカート(市場)へ向かう。中心街を通り過ぎて20分ほど歩く。街角を見て歩くのが楽しかった。土曜日の午前中で、この時間から街歩きをする人たちが意外に多かった。
 メルカートは、昔の学校の講堂のような雰囲気の建物で、この写真では分かりにくいが、半地下1階が魚介類売り場、2階が肉・野菜売り場になっていた。
102_0220.JPG


魚売場
 魚介類の売り場はすごく活気があった。店も多いし、お客さんも多い。あまりゆっくり見物する時間はなかったので、ほとんど立ち止まらずに流し見していくが、それでも目にとまるものがたくさんあった。なんと、並んでいる魚はほとんど高知の魚市場ではないか、と思うぐらい太平洋岸南日本で馴染みの魚たちがいた。やはり、サルディーニャは温帯系の(亜熱帯ではない)魚が多いということなのだろう。
 目立つのは、ボラとチヌ(クロダイ)である。ボラは、高知の海の中(あるいは海の上)では見慣れた魚であるが、高知の魚市場に丸のまま並んでいる姿を見かけることは少ない。高知の海でシュノーケリングなどで遊ぶ時や、港の堤防から海を見下ろすと、その辺に群れをなしているのがボラである。こういうボラは土佐人の目には食べものとして映ってない(しかし高知ではごく一部、沖ボラは刺身でヌタで食ったりする)。
 そのボラが、大きな扁平頭を揃えて、中小サイズが並んでいる。この光景は新鮮だった。
102_0230.JPG

 ここのボラは食用らしい。ボラの目の玉は、ぱっちり系の大きな真ん丸で、そのせいかボラの表情はなんとなく茫洋としていて、自分が食べられてしまうのかどうかも分かってないんだろう、おまえ、と言いたくなるトボケた顔だ。他の魚のなかには、俺様を食うのかてめえ、とこちらを睨みつけてるようなやつもいるし、哀願風の目つきをしてるやつもいるが、ボラが市場に並ぶとこういう顔するのか、と納得した。
 ちなみに、高知では、人間の絶壁頭のことを「ボラ頭」と呼んでいる。というか、うちの祖父さんがそういって、わたしのことを呼んでかわいがってくれた(ボラ頭は賢い、と言われて育った)。いま考えてみると、このボラの顔つきは、あまり賢そうには見えないが・・・。ともあれ、こういうボラにまつわる表現があるというのも、やっぱりその土地の文化なのだ。
 サルディーニャ名産のボッタルガ(カラスミ)は、ボラの卵巣で作られるということは知っていたが(シチリアのカラスミはマグロの卵巣から)、サルディーニャではボラのミもちゃんと食べているようだ。実は、この日の午後からボラ攻めにあう運命が待っていて、何度か焼きボラを食うことになった。そして、・・・サルディーニャのボラは、強烈な記憶となっている。

 市場でボラの次に目立ったのは、チヌ(クロダイ)である。チヌも、高知ではよく食べるし、好まれる。チヌは市場に並んでいても、まったく違和感はない。カツオも並んでいたが、隅の方に少しだけだった。これは高知の市場と大きく違う点だ。カツオは、ここではあまり食べないのだろうか。あと、アジやサバはそれほど見かけなかったし、カンパチやヒラマサやシイラなど外洋の大きめの魚たちもほとんど見かけなかった。
102_0223.JPG

 昨晩食べた鮫がたぶんこれだろう。皮を剥かれて並んでいた。
102_0225.JPG

 アンコウも並んでいた。
102_0227.JPG
 それからもう一つ、高知で馴染みの魚。ゴリである。サイズは大きくて、ハゼサイズだが、この色模様と姿形はゴリだよな。
102_0224.JPG

 あと、地中海定番?のカジキマグロ、マグロ。それほどたくさんの数が並んでいるわけではなかった。
102_0226.JPG

 そうそう、高知の魚市場では大きなスペースをとっている干物類の売り場は、ここには無かった。当然といえば当然なのだろうか。メヒカリを干物にしたらうまいのになあ・・・。鮫なんか、ミリン干しでどうだ? (高知では、シイラやフグなど、ちょっと臭みのある魚をミリンで甘く味付けして干物にする)
 カリアリの市場の魚は、太平洋岸南日本のものとかなり似ていて、ほとんど違和感を感じなかった。

肉野菜売場
 2階の肉売場をのぞくが、残り時間が少なくなってきたので、ほんとに駆け足でさっとめぐった。牛豚鶏はまあ普通に売っている。それ以外で目立ったのは、ウサギ。この写真の真ん中、脚つきの肉がウサギである。
102_0243.JPG

 他には、馬。ウマも普通に食べるようだ。
102_0248.JPG

野菜売場
 トマトはじっくり観察したかったが、時間無く通り過ぎるだけ。房取りのトマトが吊られている。
102_0239.JPG

 エスカルゴもたくさんいた。
102_0233.JPG

 サルディーニャ名産のパーネ・カラサウ(楽譜パン)売り場。このパンについてはまた別の機会に触れる。
102_0244.JPG

 市場の中に吊られている旗は、地元のサッカーチーム・カリアリのものである。赤と青の2色がテーマカラー。今期からセリエAに昇格して、カリアリの街全体が、この旗でお祝いされていた。大通りに鎮座するこの街の聖人像も、赤と青のユニホームを着せられていた。

102_0247.JPG

 メルカート滞在は正味1時間ほどしか工面できず残念だったが、短い時間でも新鮮な発見がたくさんあった。じっくり見るとなると、まる1日かけても見終わらないだろう。市場めぐりはやっぱり面白い。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

イタリア・サルディーニャ農家民宿めぐり1(カリアリのトラットリア)by のざけん

 2004年9月、イタリア・サルディーニャ島の農家民宿(アグリツーリズモ)を巡ってきた。その料理を中心に、サルディーニャ(Sardegna)という土地についても簡単に紹介しておこう。
101_0144.JPG

 9月初旬、ローマから空路で、地中海にうかぶサルディーニャ島にわたる。約1時間のフライト。アリタリア航空の機内での隣席は、迷彩服を着た寡黙な軍人だった。窓の外を見つめる彼の雰囲気から、ひさしぶりの里帰りなのか、と想像する。イラクにでも行ってたのだろうか・・・。地中海のすぐ向こうは中東である。なんとなく戦場を近くに感じてしまった。
 サルディーニャ州の州都・カリアリ(Cagliari)の空港に到着する。やはり暑い。しかし湿った暑さではなく、乾燥して日差しがきつい。これが地中海の気候なのか、熱帯・亜熱帯ではないが、温帯のなかで暑い場所、という分類でよさそうだ。この暑さの感覚を日本でいえば、九州南部から沖縄本島までの間ぐらいだろうか。周囲を海に囲まれた島であるという点でも共通する部分がありそうだ。
 サルディーニャという地名は、日本ではまだまだ知られてないだろう。イタリアの州の一つで、地中海の真ん中にある島である(島といっても、大きさはちょうど四国ぐらい)。同じイタリアのシチリア島は、日本でもよく知られている(マフィアなど・・・)。シチリア島が、イタリア=脚のつま先で蹴られたボールの位置にあるとしたら、サルディーニャ島は、膝でトラップしたボールぐらいの位置にある。ウィキペディア(Wikipedia)のイタリア地図を参照。
 空港には、通訳・ガイドをお願いしている横澤さんが出迎えに来てくれている。横澤さんはカリアリ在住の女性で、通訳・ガイドや日本とのビジネスについてのコンサルタントをしている(横澤さんの会社)。横澤さんは、イタリア語はもちろんよくできるし、車で案内してもらえるので、サルディーニャへの旅行を考えている方は相談してみることをお薦めする。サルディーニャ島内は、公共交通機関があまり発達してないので、移動手段は車がメイン。自分でレンタカーを運転する自信のない方は、個人旅行でも、こうしたガイド利用がベターだ。今回は、前半は横澤さんにガイドをお願いし車に乗せてもらったが、後半はレンタカーを借りて島内を移動した。

カリアリ市内へ
 空港から横澤さんの車でカリアリ市内に向かい、ホテル「4 Mori(クアトロ・モーリ)」にチェックイン。市内の中心街すぐ裏の小さな通りに面していて、便利でありながら落ち着いたロケーション。3つ星で小さなホテルだが、部屋や設備は必要十分、ロビーも天井が高く、風格のある建築だった。受付の女性も、にこやかで雰囲気がよく、料金もリーズナブル。他に4つ星のホテルも横澤さんに紹介してもらったのだが、4つ星になると料金が2倍近くになる。こちらを選んで正解だった。(しかし、3つ星クラスだとエレベーターが無かったり、ベルもいないこともあるので、重いスーツケースを抱えて階段を上り下りするのがきつい人は、無難に4つ星という選択を。)

Barで軽食
 荷物を置いて、すぐに外出し、カリアリ市街地を散歩する。州都カリアリは人口30万人ほど。サルディーニャで一番大きな街だ。
 まずは、ホテルからすぐ近くのBar(バール)に入って腹ごしらえ。イタリアでは超定番の生ハム(プロシュート)のパニーノ、くたくたにゆでられたほうれん草のサンドイッチを食べる。街中の普通のバールで食べられるこういう軽食モノが、ちゃんと普通にうまい。これがやっぱりイタリアか。日本だと、そのへんの喫茶店に入ってサンドイッチを注文しても、「うまい」といえるもの、満足できるものに出会える機会はごくわずかである。その原因は、やはりハムや肉加工品の質にあるのだろう。イタリアでは、生ハムやサラミなど、それこそ普通に手頃な値段で、ちゃんとした(当たり前か)本物が食べられる。それに比べて、日本のサンドイッチに挟まっているハムは・・・・お分かりだろう、添加物や調味料、そして文字通り水分で水増しされているものがほとんどである。
 イタリアでは、おいしいトマト(やっぱりトマトはうまかった)と、生ハムやサラミを挟むだけで、普通にうまいサンドやパニーノができてしまう。よく冷えたスプマンテ(スパークリングワイン)をグラスでもらって、乾いた喉を潤す。小さな幸せの瞬間。
 このバールもなにげないようで、実はそれなりに歴史のある建築らしく、石造りで天井が高かった。カリアリ中心街の古い建物は、このように一様に天井が高い。暑い地域で、エアコンの無い時代の産物なのだろうが、天井の高い部屋はなんとなく居心地がよくてその空気が大好きだ。
 バールを出て、とりあえずカリアリ市内を一望できる小高い丘の上を目指す。この丘の旧市街は城壁に囲まれており、中心に教会がある。両側に石造りの建物、細い道は石畳。ヨーロッパらしい風景だが、ところどころにアジア系やイスラム系を思わせる名残があるところが、サルディーニャの特徴か。地中海のほぼ真ん中に位置するという地理的な要因もあり、古来から様々な民族がこの島を往来していたという歴史をもつ。丘の上の教会からの景色は・・・
101_0143.JPG

 カリアリ旧市街は、南方に大きく開けて、彼方まで地中海が広がっている。地中海に抱かれている街、という方がしっくりする。サルディーニャの食べ物はもちろん、数々の美しいビーチもすべて、この地中海の恵みである。
101_0150.JPG

 さて、前フリが長くなったが、この夜のカリアリでの食事は、中心街の小さな路地のトラットリアに入った。店に入ったところに冷蔵ショーケースがあり、魚貝がたくさん並んでいる。メニューをみても、魚介をウリにしている店らしく、オーダーも魚介を中心にする。というよりも、メニューを眺めている時にすぐ後ろの席で、おじさんが独りで食べていた魚介のフリットがあまりにうまそうだったので、あれをぜひ!ということになったのだった。ワインは白。サルディーニャの中心的なブドウ品種であるヴェルメンティーノのボトルを注文した。

アンティ・パスト(前菜)
 最初は魚貝の前菜盛り合わせ。タコやイワシのマリネ、カレー風味のタマネギ&白身の魚、エビのトマトソース。
101_0191.JPG
 それとは別に、魚貝のバジル&オリーブオイル炒め。タコ、イカ、エビをオリーブオイルで炒めただけのシンプルな料理だが、もちろんうまかった。
653_5379.JPG

 前菜のもう一皿がこれ。種類は忘れたが小さな鮫の軟骨ごと煮込んでビネガーに漬けたもの。鮫の身自体に少し臭みがあって、そのままでは食べにくいから、酢を利用して漬ける。こういう料理がやはり、その土地の文化を計るモノサシなんだろうな、と思う。臭かったりクセがあったりして食べにくいものを如何に工夫して食べられるようにするか、その知恵がその土地の料理として文化の域につながっていく。この皿は、思ったより酢がきいてなくて、ちょっと臭いままだったが、それでも十分に食べられた。
653_5381.JPG

プリモ・ピアット
 このリストランテのパンはかなりうまかったが、詳細は割愛。次に、プリモ・ピアットで、パスタとリゾット。
 まずは、イカスミのリゾット。イカスミのソース(軽くトマト系)に、エビやムール貝がからまっていて、とてもおいしかった。
653_5383.JPG
 あとは、ポモドーロ(トマト)のベーシックなスパゲッティ。もう一皿、アサリのオイル系ベーシックなスパゲティ。このあたりは、普通においしかった。

セコンド・ピアット(主菜)
 待ちに待った主菜。まずは、魚貝のフリット盛り合わせ。
653_5388.JPG

 エビ、イカ、そしてその向こうに見える小さな赤い魚が分かるだろうか。この赤い小魚は、もしかしてメヒカリではないか?! 高知ではメヒカリの干物は最高の酒の肴だと言われる(ごく一部の好きな人だけか?)。白身の、でもしっかりと旨味のある魚である。まさか、地中海のサルディーニャ島でメヒカリに出逢うとは・・・。このメヒカリのフリットは、やはりうまかった(ハラワタを除いていればもっとうまいと思うのだが、丸ごと揚げていた)。

 次に、ムール貝のトマトソース。トマト系ソースのムール貝は初めて食べたが、予想に違わずおいしかった。
653_5389.JPG

 ここまでの料理を全て完食して、同行してもらった通訳の横澤さんに、「いままでの日本人のなかで一番よく食べますね」と褒められた(たぶん)。たいていの日本人は、プリモのパスタあたりでお腹いっぱいになってしまって、セコンドまで到達することがほとんどなかったという。ま、ここまで食べるのは当然として、もちろんデザートも、食後酒も、しっかり堪能したのであった。

ドルチェ
 デザートは、アイスクリームにキャラメルソースかけ。やっぱりアイスのサイズはでかかったが、これも当然、完食。もう一つは、レモン味のソルベ。

食後酒
 さて、前から楽しみにしていたイタリアでのメシの後の強い酒。レモンチェッロとミルト酒を頼んだ。
653_5392.JPG
 レモンチェッロはその名の通り、レモンから作ったリキュールで、さわやかな酸味があって、余韻を長く楽しめるおいしさだった。アルコール度数は少し高いが(20度台)、ストレートでおいしく飲める。冷えているのは、もちろんうまい。この店のレモンチェッロはレモンらしい酸味があってうまかったが、ローマの空港で仕入れた、明らかにお土産品の作りのものは、同じレモンチェッロとは思えないぐらい、酸味が無く、ただ甘いだけだった(後日この土産を飲み干したという女性陣に感服)。ちなみにレモンチェッロの本場は、サルディーニャの対岸、ナポリ近郊。今回は残念ながらナポリ近辺のレモンチェッロを味わう機会がなかった。

 それから、サルディーニャ特産のミルト酒。ミルトという木の実を漬けたリキュールである。独特の風味があり、翌日以降の農家民宿では、ほぼ毎日食後に飲むことになった。ミルト酒についての詳細はまた次回にでも。

 以上の料理と、白ワイン2本+食後酒で、3人分の料金が100ユーロほど。1ユーロ=135円ぐらいなので、1人4000円程度。ワインの値段が安いので、合計も安く感じる。日本のイタリア料理店に行くと、ワインの値段が高くて、下手すると(飲む人と行って何本もあけると・・・)料理よりもワインにお金を払うという情けない状態になってしまう。ワインが安いって、いいよなぁ・・・と以後のレストランで食事のたびに感じることになった。ちなみに2本目の白ワインは、サルディーニャの北西岸の街Alghero(アルゲーロ)のSELLA&MOSCA社のものだった。ここのワインは確かサントリーが扱っていて、日本でも目に触れる機会がある(わたしもよく飲んでいた)。後日聞いたところ、島外資本のかなり大規模なワイナリーらしい。

ジェラート
 そういえば、旧市街を歩いたあと夕方に(晩飯前に)、市内でも評判だという店でジェラートを堪能してきた。
101_0180.JPG

 これは、イチゴとスイカのジェラートで、思ったより甘さ控えめで(イタリアのものは甘いという先入観が強すぎたかも)、果物のさわやかなうま味が感じられる、さすがの美味しさだった。
101_0179.JPG

 普通のジェラートの横には、ド派手なジェラート・・・・?。
101_0178.JPG

 これは実は、冷たいジェラートではなく、常温の生クリーム系のお菓子らしい。それほど美味しいとは聞かなかったが、食べてみればよかった、と後悔している。

さて、リストランテを出て、ホテル前のBarでミネラルウォーターを買ってエスプレッソを飲んで(Barはコンビニみたいな存在でもあるようだ)、これでサルディーニャの1日目が終了。翌日は午前中にメルカート(市場)を見物することになった。


| | Comments (0) | TrackBack (0)